第289話 緊急出動!

 学園祭も期間の中間の平日は結構暇である。

 だれている、とも言う。

 ただこういう時こそ事故は起こりやすいらしい。


「実行委員長池尻より学生会宛て緊急連絡」

 おいおい何事だ。

 緊急連絡なんて学生会の3年で初めてだぞ。


「学校裏、教授会主催リアル空中バトルにて海上接触事故の模様。詳細不明。学生会長の応答を乞う」


「学生会長津田了解」

 下手をすれば大事だぞ。

 立ち上がり部屋を出て、部屋に鍵をかけながら無線をふく。


「学生会長津田より学生会役員各位宛、至急Bブロック3、空中バトル実施会場へ集合。繰り返す。学生会役員各位にあっては至急Bブロック3、空中バトル実施会場へ集合。なお学生会拠点は移動開始する。回信省略」


 階段を3段抜かしで降り、近くの出口から外へ。

 工房前に駐機中の簡易潜航艇に乗る。


 空飛ぶマイクロバスは大学学園祭でヒーリングサロンとして営業中。

 空飛ぶ漁船は教授会貸出中。

 現在時動けるマシンはこれだけだ。


「学生会長津田より実行委員長宛。当方は現場の海上へ直接向かう。情報あれば一報されたし。どうぞ」

「実行委員長池尻了解。頼む、こっちは足がない」


 実行委員長の池尻君は補助魔法科4年。

 学園祭の度に色々世話になっているので完全な顔見知りだ。


 簡易潜航艇は一気に上昇して校舎を飛び越える。

 そのまま墜落現場に近い海上を目指す。

 そうだ、ジェニーの魔法は使えないかな。

「学生会長津田から学生会ジェニー宛て。魔法で怪我人等の有無は判断できないか、どうぞ」


「学生会ジェニー了解。確認中……怪我人あり、軽症1名。緊急救護の必要性……無しと思われます。どうぞ」


 ほっと一息。

「学生会長津田了解。実行委員長了解でしょうか、どうぞ」

「実行委員長池尻了解」


 よし、ちょっと安心しつつ海上へ。

 何台か飛行機械が集まっている場所がある。

 そこだな。


 1機だけ形も色も違う、真っ赤な塗装に何故か前方カウルに角のついた飛行スクーターがいる。

 乗っているのは腐るほど見知っている中年親父。


「田奈先生、状況どうですか」

 近くにいるロビー製造タイプの飛行機械の騒音で怒鳴らないと聞こえない。


「長津田か、ちょうどいい。その潜航艇を貸せ」

 おい、状況くらい説明しろよ。


「パワードスーツとホバギーが接触して下に沈んでいる。魔法で引上げたいが目視した方が確実だ。潜航艇があれば都合がいい」


 成程な。

 なので近くの浜へ乗り換えのため急行。


「要救助者は無しですね」

「無い、大丈夫だ」


 なので無線で一報。


「学生会長津田より事故現場から一報。事故内容にあっては飛行機械の接触事故。要救助者無し。これから沈んだ飛行機械2台のサルベージ作業実施予定。どうぞ」

「実行委委員長池尻、代表して了解」


 砂浜に到着して、教授と機体を乗り換える。

「操縦方法はそのバイクと同じだな」

「その通りです」

「ちゃんと標準化してあるな。大変よろしい」


 教授はそう言ってちょっと腹が出た体型できつそうに潜水艇に乗り込む。


「あとその空中スクーターは3倍速い仕様だから気をつけろよ、じゃあな」

 ……何だよ、その3倍速いって。

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