第284話 この方誰のお客様?

 俺が運営本部に着いた時にはもうジェニーとソフィーも到着していた。


 わりと大柄な褐色の長い髪の見慣れない白人女性が座っている。

 年齢的には由香里姉かもうちょっと上の感じ。

 この人が例のお客さんかな。

 さっそくジェニーに状況を聞いてみる。


「この方はEUの特区の大学生のエリカさんと言うそうれす。前にEUの特区で同じ学校にいた時の知り合いが、うちの学校にいるらしいと聞いて訪ねてみたそうれす。この学校で何か会長をしているという話を聞いたそうれすが、伝聞なので自信が無いそうれす」


 少なくとも俺でない事は確かだ。

 とすると、学生会長なら由香里姉か風遊美さんかな。


「学年は何年生か聞いてみてくれ」


 ジェニーが相手と英語でない言語でやりとりする。


「前と同じなら今は大学3年とのことれす」


 とすると由香里姉か。

 ん、待てよ。

 EUと言うとむしろ風遊美さんだよな。

 向こうとこっちは新学期の開始時期が違うから学年がずれる可能性もあるし。


 うーん、でも風遊美さんの今の名前は日本に来てからの名前なんだよな。

 前の名前はちらっと聞いたけれど、残念ながら思い出せない。


「ジェニー、その人の前の名前を聞いてもらっていいか」


 またジェニーがやりとり。

「向こうの学校でははテオドーラ・ローラ・カストナーという名前だったそうれすが、この名前は仮の名前だったそうです。こっちに来てから名前を変えたらしいそうれす」


 そうだ、テオドーラだ。間違いない。


「わかった。でもジェニー、ひとつだけ確認。彼女に敵意とかそういうの無いよな」


 風遊美さんは前の学校ではボロボロ状態だったと自分で言っていた。

 なので失礼ではあるが念には念を入れてだ。


「全然大丈夫です。私が保証するれす」

「なら本人と連絡をつける。学生会室へ案内しよう」


 あえて風遊美さんの今の名前は出さない。

 用心し過ぎかもしれないけれど。


 風遊美さんへSNSでエリカさんという方がEU特区から来ていること、これから学生会室に案内する事を連絡する。

 直ぐに返事が返ってきた。

 学生会室に向かうそうだ。


「ジェニー、悪いが案内して先に学生会室に向かってくれ。ちょっとお茶菓子を買ってくる」

「了解れすよ」


 あと学生会室にも無線連絡。

「学生会長津田から学生会室あて。風遊美さんのお客さんがこれからそっちに向かう。ジェニーとソフィーが引率する」


「学生会室薊野了解」

 今の番は香緒里ちゃんだったか。

 ならちょうどいい。


 俺はお茶菓子を買うべく、お馴染み創造製作研究会へダッシュする。

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