第282話 休みの日でも登校するよ
次の土曜日。
俺と香緒里ちゃんと詩織ちゃんは3人で学生会の作業場にいた。
学園祭用の商品作りの為である。
幸いバネ作業の方は夏休み後半にもバイトを雇って作業をしたので、11月販売分までの在庫は出来ている。
なので学園祭までは商品作業の方に集中できる。
「今年は香緒里先輩の刀との同門対決なのですよ」
どうやら達人氏に判定してもらうつもりらしい。
今では2人の作品、俺の審査魔法で見ても性能差は無い。
単なる味付けの好みの差、という感じだ。
今では2人共、材料の鉄の成分調整から自分でやっているし。
大元の材料には香緒里ちゃんが日立金属安来工場の白紙、詩織ちゃんが砂鉄から自己精錬した鉄という違いはあるけれど。
強いて言えば香緒里ちゃんが若干耐久性重視、詩織ちゃんが若干切れ味重視。
でもいくら達人氏でもそんなの判定出来るのだろうか。
「詩織ちゃん、平日はあんまりロビーに負担かけるなよ」
「ははは、ばれていたですか。でもロビーは新規に設計図だけで500万円の収入があったのです。なので少し位は……」
「お前も追加発注あっただろ」
「ばれてましたですか。しょうがないです。またプリンで還元しておくです」
「プリンはもういいから」
「でもこの前2箱購入した本格派たまごプリン、あれ美味しかったです。奈津季さんが『詩織ちゃん悪い、御免、許して』と言いながら一気に5個位食べていましたし」
「どうも減りが早いと思ったら奈津季先輩でしたか。でもしょうがないのです。まあ許してあげるのです」
「お前の親父も同じ位食べていたぞ」
「親父は私と共同正犯だからいいのです」
マンション玄関先の詩織提供プリン収納庫、残念ながら完全に我が家で市民権を得てしまった。
しかもプリンだけではなく、冷凍できるスイーツが各種色々揃っている。
美味しい銘柄が切れそうになると誰かが勝手に発注をかける程だ。
実際誰が買ったか中身がもうわからない状態になっている。
まあ大半は詩織ちゃんが親父会社費用で購入しているか、香緒里ちゃんが会社費用で購入しているのだけれども。
さて、そろそろ作業を開始するか。
俺が製造するのは魔法杖とアミュレット。
基本的に魔法使いしか使えないから、ある程度汎用性がある香緒里ちゃんや詩織ちゃんの刀程数は出ない筈だ。
それに基本的な機能の杖は創造制作研究会の方でも作っているし。
俺が作るのは特殊タイプと小型タイプ。
具体的には
○ 多属性用複数魔石仕様(魔石3個仕様、4個仕様、5個仕様)
○ 医療用内科仕様、医療用外科仕様
○ キーホルダー・ストラップタイプ非常時用
が主な商品だ。
要は今まで作った物をある程度量産できるようにに再設計する方針。
そしてもう1種類だけ、密かに作ろうとしているものがある。
俺の研究成果の集大成、特別で最強な超小型魔法杖、第2号にして完成品。
ちなみに今度は小型ボールペン型だ。
これなら飛行機に持って入ったり、店でポケットに入れていても不自然ではないだろう。
筐体は本物の高級2色ボールペンを使い、実際にボールペンとしても使用可能。
中身は、第1号試作品に仕込んでいた魔力分析ログの解析結果に基づいて奈津希さん仕様に調整。
最初の試作品はログを採るために太くなり、結果招き猫型というちょっと使いにくい形になってしまったのだ。
さあ、まずは量産試作品から作り始めるか。
量産品といいつつも他の何処でも売っていない、特別な逸品を。
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