第281話 今年も来ました書類の山が

 さて、秋の学校スタートと同時に始まる学生会恒例の作業がある。

 言わずと知れた学園祭作業だ。


 今後の事も考え、審査は基本的にはルイスくんと詩織ちゃんに審査魔法持ちのロビーの3人でやってもらうことにした。

 俺と香緒里ちゃんで対外折衝と学内調整。

 ジェニーとソフィーは広報に徹してもらう。


 公社主催の特区全体の対策会議によれば、今年の入島者予測は去年とほぼ同じ。

 他に公社から、いざという時には寮の空き部屋貸してねというお願いを受ける。

 更に空港管制室と自衛隊から、航空路の邪魔はしないでねと念を押される。

 この辺もまあ、例年通りだ。


 寮の件は寮務委員会の方へ回し、航空路の方は審査時に注意する。

 そしてあとは、学内での物品や場所についての苦情折衝だ。


 ただうちの高専、有り難い事に話が通じない馬鹿はほとんどいない。

 なのである程度合理的な解決策を提案し、場合によっては学生会権限で多少のフォローをしてやれば大体は丸く収まる。


 あと、今年は香緒里ちゃんや詩織ちゃんの刀や俺の魔法杖やアミュレット類の委託販売もする予定だ。

 委託先は毎度おなじみ俺の古巣、創造製作研究会。

 なお交渉の際に話を聞いた処によれば、今年も江田先輩は和菓子を作りに戻ってくるらしい。


 色々な意味で例年通りで処理等も慣れきった学園祭。

 そして俺にとっては学生会で迎える最後の学園祭だ。

 最高のものにしたいというより、頼むから何も起こらないで欲しいという気持ちのほうが強いけれど。


 学校開始2日目、今日は香緒里ちゃんが外番で俺が部屋番。

 決裁待ちの書類を判子を押しながら確認する。


「今年は何か変な出し物等は出ているかな」

「教授会で派手な模擬戦が出ている」


 ルイスが『要注意・コピー』と朱書きした申請用紙を渡してくれる。


「内容は……飛行機械によるバトルロイヤルか。アメリカのテレビ局まで来るのか」


 テレビ局の名は聞き覚えがある。

 詩織ちゃんの魔法駆動パワードスーツを大量買いしてバトル番組を作った処だ。


「詩織作のパワードスーツとロビー作の飛行機械を使い、ペイントボールを撃ち合う模擬戦だそうだ。場所は学校沖海上。救難用に学生会所有の飛行漁船を貸して欲しいだと」

「まあ教授会主催イベントには学生会の審査権限は無いからな。ただコピー取って公社と飛行場と自衛隊と魔技大学生会に連絡しておくか。教授会の方でも連絡はしていると思うけどさ」


 ロビーの飛行機械は少しの改造で魔力が無い人でも使用可能に出来る。

 そっちの仕様で大分パテント代が入ったらしい。


 それにしてもここ数年、教授会が遊び道具に使っているのは学生会関連者のパテント有り機械ばかりだな。

 まあ学生会と教授会は身内みたいなもの。

 だから許可も取りやすいし使いやすいのだろうけれども。


「後はこれだな」

 ルイスはもう1枚申請用紙を取り出す。


「あ、去年世話になった居合い斬りの達人、また来るのか」

 ああいうイベントは金輪際勘弁してほしいが、彼に対しては俺は悪い印象はない。


「ここの刀のデモも兼ねて居合斬りの実演をするそうだ。それを聞いて詩織が工房へ飛んでいった。お土産用の本気仕様の刀を作るです、との事だ」


 詩織ちゃんがいないのはそういう理由か。

 そしてその分をルイスとロビーで分担していると。


 昨年の経験があるルイスと比べ、新人なのに審査魔法持ちの分厄介な書類が多いロビーはかなり苦戦しているようだ。

 しょうが無い。

 大ベテランの俺が少し手伝ってやるとするか。

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