第273話 独りも決して悪くないけれど
何とか昼少し過ぎたあたりでカラオケを脱出。
熱田神宮近くの超有名店で名物のひつまぶしを食べる。
混んではいたけれど運良くあまり待たずに入れた。
「昼からはどうするんだ」
「俺は大須の商店街をぶらぶらしようかと」
「僕は熱田神宮を回ってから名古屋城に行く予定だ」
ルイス、きみはやっぱり真っ当だ。
「夕食はそろそれ別々かい」
「実はですね。夜は香緒里先輩と相談してスイーツのバイキングに行こうかと言っているのです。風遊美先輩も一緒なのです」
「いいね。僕も一緒していいかい」
「当然大丈夫なのです。香緒里先輩に連絡しておくのです」
詩織ちゃんがスマホを出す。
とりあえず俺やルイスはこの後は単独で伸び伸び出来るようだ。
よしよし。
「それまでは奈津季さんと詩織ちゃんは名駅か栄あたりを回ったらどうですか。昨日名駅行ったから今日は栄の地下街あたりがいいかな。美味しいものたくさんありますし、デパートなども充実していますから」
「いいですね、それ」
「よし、詩織ちゃん行こうか」
「賛成なのです」
俺とルイスはこっそり目配せ。
よしよし、互いに危険物は排除したぞ。
◇◇◇
たまには独りで歩きたい時もある。
元々の俺は基本的に単独行動派。
独りで好き勝手に知らない場所を歩くのが好きだった。
ただ特区内は狭すぎて歩く程の場所が無い。
なので久しぶりの独り歩きになる。
熱田神宮を拝観した後地下鉄に乗り、5駅目の上前津で降りる。
8番出口で降りてちょっと歩いたら、観光案内等でおなじみの大須の招き猫がある広場に出る。
店を適当に見ながら特に何か買う訳でもなく歩いて行く。
色々な店が並んでいる。
テイクアウトできる店も多い。
詩織ちゃんがいればえらい事になったろうな。
そんな事を思ったりもしながら歩く。
そう言えば最近、あまり独りで行動する事がない。
まあ共同で住んでいるから当然なんだけども。
それまでは独りのほうがすっと多かった。
中学校までは由香里姉、香緒里ちゃんを除けば孤立していたようなものだったし、高専入って1年目もわりとそうだ。
基本的に独りで判断して独りで行動する。
それが自然で当たり前。
俺自身人嫌いな方だと思っていたし。
それが今や女の子と共同生活していたり、学生会長していたり。
1人でこんな異郷の街を散歩しているときでさえ、これは誰かが好きそうだなとか考えたりする始末。
中学2~3年の内心尖りまくっていた頃の俺から見たら堕落だよな。
少なくとも大分遠い場所まで来てしまったのは確か。
でもそれが悪い事とは思わない。
ただ仲間に恵まれて、それも自然と思えるようになっただけ。
まあ面倒な事も多いけどさ。
それすら楽しいと思える事も多い。
そう思えるのは大きな変化だよな。
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