第268話 古き街並みに夜は過ぎて
すき焼き&ステーキ作戦、大成功だった。
「しかし詩織ちゃん、すき焼き詳しいな」
最初に肉を焼くところから妙に手慣れていた。
「へっへっへっ、前に親父と高い店行って学習したですよ。ステーキも別の店でやっていたのを覚えていたのです」
そんなの見ただけでマスターするなんて何だかな。
「美味しかったですね。凄く楽しいです」
風遊美さんの感想に、香緒里ちゃんも俺も頷く。
流石飛騨牛、こんないい加減な食べ方でも凄く美味い。
何というか肉自体に旨味と甘味があるのだ。
「ふっふっふっ、まだまだ夜の部は始まったばかりなのですよ。これから夜の散歩をして、帰りに腹ごなしのラーメンを食べて、部屋でしっぽりするまでが予定ですよ」
部屋でしっぽり、って処に異議があるがまあいい。
紙皿等ゴミ類はまとめて買い物で貰った袋へ。
鍋とステーキ皿は清拭魔法をかけてまとめてふと気づく。
ひょっとして俺、明日からこの重いのを持って歩くのだろうか。
他に持たせるわけにもいかないし、宿に到着すれば置いておけるからまあいいか。
◇◇◇
そんな訳で夜の街並みを一通り散策して、詩織ちゃんおすすめの高山ラーメンを食べて旅館へ戻る方向に足を向ける。
夜の古い街散歩、なかなか面白い。
昔ながらの陣屋が映画セットのように見えたり、古い街並みが結構賑わっていて妙に幻想的だったり。
気温もかなり涼しくなってきて心地良い。
旅館の手前で立て続けにSNSに着信が入る。
1件はジェニーから。
『街で外人さんと意気投合したので遅くなります』
お前も外人だろうというつっこみはこの際置いておく。
もう1件はルイスから。
『カラオケで色物合戦中。遅くなる』
そういう事は、2組とも遅くなるという事か。
「2組とも遅くなるらしいけれど、どうする。こっちもカラオケとか行くか」
「でも明日から名古屋と東京ですよね。ならカラオケは明日以降でいいのでは」
「昨日は修さんにも迷惑かけましたしね」
確かに実は、俺は眠い。
あと最後のラーメンは美味かったがちょっと食べすぎた。
「ならいい案があるのですよ。風遊美先輩と香緒里先輩お耳拝借なのです」
俺を除け者にして3人でひそひそ相談。
「あ、それはいいですね」
「楽しそうです」
と3人で盛り上がっている。
俺はちょっと嫌な予感。
とりあえず旅館に帰って、浴衣に着替えて風呂に入る。
今日は男女別なのでここまでは安心。
部屋に帰り、俺は荷物をまとめる。
「それじゃ、俺は向こうの6畳間で寝てくるよ。ここは布団3人分だし」
そう言って去ろうとしたところを香緒里ちゃんに止められる。
「修兄、夜はこれからです」
「でも布団足りないだろ」
「布団は3つをくっつければ大丈夫なのですよ」
詩織ちゃんがそう言って、風遊美さんと香緒里ちゃんで敷布団3枚を中央に寄せる。
「この気温なら掛け布団をしっかりかけなくても大丈夫ですね。横掛けで足が出るくらいでちょうどです」
「という訳で修先輩、まずはこの位置に寝るですよ」
ちなみに枕は詩織ちゃんがどこからともなく余分に1個取り出した。
多分空き部屋のを空間魔法を使って取り寄せたのだろう。
有無を言わさぬ感じなので、俺は仕方なく指定された場所に横になる。
右側に風遊美さんが横になり、左側に詩織ちゃんが横になる。
詩織ちゃんの向こう側は香緒里ちゃんだ。
3枚の布団に等間隔に横になったところで、風遊美さんと香緒里ちゃんが1枚の敷布団を横にして、2人ずつ掛ける形にする。
「それでは修兄、照明を消して欲しいです」
言われるままに魔法で電気オフ。
「それでは両手を広げて繋げるですよ」
え、これってひょっとして。
逃げる間もなく俺の両手はそれぞれ風遊美さんと詩織ちゃんに握られる。
そして意識が落ちていく……
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