第267話 楽しく怪しいお買い出し

 スーパーに入って単独テナントの肉屋をサラッと見て、詩織ちゃんは少し考える。

 そして香緒里ちゃんにこそこそと相談。

 何やら企んでいるのがありありだ。


 あ、どうも香緒里ちゃんがOKか肯定かしたようだ。

 今度は風遊美さんにこそこそと相談する。


「いいですね、それなら先に道具を確認ですね」

「なら修先輩。100円ショップ行くですよ」


 何だろう。

 何をする気だろう。


 100円ショップをだーっと詩織ちゃんはカゴを持って探し回り、そして立ち止まってこっちを手招きする。


「あったですよ」

 詩織ちゃんが見つけたのは、小さい鍋とステーキ皿。


「ここで質問です。先輩方はすき焼きとステーキ、どっちが食べたいでしょうか?」


「両方です!」

 すかさず風遊美さん。

 何かキャラがやっぱり違うぞ。


「そうですね。私も両方食べたいです」

「多数決により、両方になったのです」

 詩織ちゃんはステーキ皿4つとなべ2つ、鍋置きを2つカゴに入れる。

 なお、既に深めの紙皿と割り箸はかごに入っている。


「持つのは修先輩の仕事なのです」

 既に重そうなカゴを俺に渡す。


「何をする気だ」

「香織先輩の魔法なら、この安い鍋に温度属性を持たせるのは簡単なのです」


 ん、それってどういう……

 そうか!


「成程、よく考えた!」

「ふっふっふっ。必要は発明の母なのです」


 多分違うがまあいいだろう。

 要は香緒里ちゃんが温度属性を持たせた鍋やステーキ皿で、肉や野菜を部屋で料理して食べようということだろう。

 確かに面白いかもしれない。


 そんな訳でかなり重い買い物袋を俺のディパックに入れて。

 そして今度はスーパーの食料品売場へ。

 ちょうどカット済みのすき焼き用野菜セットみたいなのがあったので購入。

 あとは豆腐と白滝と、すき焼きのタレとステーキのタレ。

 卵も忘れない、ドリンクも。

 主食のご飯が入った弁当も人数分カゴに入れる。


「肉はあそこの精肉店でいいの買うのです」

 というので、これで会計。

 最後に肉屋でステーキ用に切ってもらった飛騨牛と、すき焼き用の薄切りの飛騨牛を買って宿に帰る。


 他の2組はどこかへ食べに行ったようで不在だ。

 既に敷かれていた布団を少しどけて宴会スペースを作る。

 大きめの座卓に紙皿、ステーキ皿、鍋おきの上に鍋をセット。

 更に材料一式も並べる。


「念のため、清拭魔法をかけます」

 鍋とステーキ皿に風遊美さんの清拭魔法がかけられた。


「ではステーキ皿は200度で、鍋は100度でいいですね」

 香緒里ちゃんの魔法もかかる。


「さて、まずは全部に牛脂を敷くのですよ」

 詩織ちゃんが鍋奉行宜しく作業を開始した。

 何か珍しいけど楽しい光景だ。

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