第258話 最初の宿は山奥だ

 学生会関係者全員、前期末の試験は一発クリア。

 バネ工場での強制労働3日間を終えて旅行へと突入した。


 1日めは結構な強行軍。

 飛行機で東京へ出て、新宿までモノレールと電車を乗り継いで行く。

 更にJRの特急で穂高というまさに山の麓な名前の駅で降り、バスで1時間山の奥へ奥へと入っていく。

 朝の8時にマンションを出て、着いたのはもう午後4時ちょっと前だ。


「流石にちょっと疲れたれすね」

 とジェニーが言うのも無理はない。


「でも駅弁も美味しかったし楽しかったのです」


 詩織ちゃんこいつの食欲と体力は人類外なので放っておこう。

 4時間程度のスーパーあずさ車中で2回も駅弁を食べているような奴だから。


「何か、いかにも古い日本の温泉という感じだな」


 確かに、春に行った那須の温泉旅館よりも一段と古さを感じさせる。

 木を使ったいかにもという感じではなく、古い建物をトタンやコンクリ等で直しながら使っている感じ。

 高級感はあまり無い。でも。


「何かすごくいい感じですね」

 風遊美さんの好みには合致しているらしい。


 早速手続きをして部屋に入る。

 今回予約したのは湯治とか登山客向きの安い大部屋。

 全員で1室だ。


「ここでは枕投げも布団蒸しも禁止だからな。その分温泉は山程あるから存分に楽しんでくれ。夕食は18時、明日は9時40分のバスで出るから、それまでに全部の温泉を制覇するつもりで。あと焼山で芋や卵を蒸したい人は各自フロントに言ってくれ。では解散」

 と言っても全員同じ部屋なのだけれど。


 早速全員浴衣に着替え始める。

 俺とルイスは例によってこそこそ着替える。

 なおロビーはフロントで借りた最大サイズの浴衣でも短すぎて、かなり大胆かつ残念な感じになってしまった。

 まあ本人は全く気にしていないからいいのだが。


 着替えたら早速温泉巡りだ。

 ここは十箇所以上の温泉があり、ほとんどが混浴。

 清掃時間があったり女性専用時間があったりして、全部回るならそれなりの作戦が必要だ。

 まあそんな事は考えずにまったり愉しめばそれでいいのだけれど。


 しかしてっきり男子組、女子組に別れて行くのかと思ったら、攻撃魔法科プラス詩織ちゃん組、北アメリカ連合に別れてさっさと温泉の旅に出てしまった。

 何かルイス君が助けてくれという顔をしていたような気がするが、きっと気のせいだろう。


 残ったのは俺と風遊美さんと香緒里ちゃん。

 ある種すごくいつもな組み合わせ。


「なら私達でのんびり行きましょうか」

「そうですね」


 という事で3人で風呂めぐりの旅に出る。

 まずは別浴の内湯で身体を洗った後合流して散策。


 それにしてもここは風呂が多い。

 単に浴槽を変えているだけでなく、ロケーションも違えば源泉も泉質も違う。

 しかも遠い露天風呂まで最大15分歩くという何かもう、とんでもない作りだ。

 要は山の上から谷までの斜面全部に温泉が散らばっているという感じ。

 しかも斜面をお湯が流れていたりするし。


「何かもう楽しいです。本当は連泊したい位です」

「お子様が多いからな、連泊すると飽きるだろ」

「そうですね」


 入らずに温泉や源泉等をひととおり回るだけでほぼ1時間かかってしまった。

 まあ途中温泉で卵を蒸したりとか、きのこ狩りに挑戦とかもしたのだが。

 ちなみにきのこ狩りは残念ながら食べられそうなのを発見できなかった。

 温泉卵は人数分作ったけれど。


 ぐるりと敷地内を回り、一番下にある菩薩の湯という露天風呂に落ち着く。

 下と言っても湯元はここ専用のもの。

 場所は正面玄関から10分位というそこそこの距離だ。


 脱衣場なんて設備は無く、屋根付きの荷物を置くスペースのみという強烈な作り。

 まあここの露天風呂は大体そんな感じだけれども。

 俺としては大変心臓に悪い作りだ。

 入るまでは出来るだけあさっての方を見て風呂に入る。

 まあ入ってしまえばいつもと同じだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援した人

応援すると応援コメントも書けます