第20章 バネ工場のお引越
第251話 工房で少し考えた
5月3日。
ゴールデンウィーク第2陣の初日。
ジェニーと奈津季さん引率の2年生、1年生組は空飛ぶ漁船で海へと出ていった。
勿論竿3本抱えてだ。
「晩御飯は刺盛りな」
と奈津季さんが言っていたので、多分その辺の大物を狙っているんだろう。
俺と香緒里ちゃんは工房で例によって例の如くバネ作業。
ただ、この工房も大分手狭になってきた。
最初は俺1人のスペースだったのに、今では
○ バネ工場兼倉庫
○ 刀製造工房
○ 一般機械加工工房
○ ロビーのバイク工房
○ 空飛ぶ漁船格納庫
となっている。
この前まではロビーの飛行機械も陣取っていた。
ロビーの飛行機械は詩織ちゃんとまた別の意味でロマンな作品だった。
何というか、荒廃した未来の地球に置いたらピッタリするような出来栄え。
無骨、かつパワフルな雰囲気が異彩を放っている。
1600ccエンジン駆動のダクテッドファンで浮き上がり、400ccのエンジンで発電機を駆動。
浮上と基本的な姿勢制御、前進等は魔法無しで動かしつつ姿勢制御をMJ管等の魔法制御で行うスタイル。
由香里姉のマイクロバスキャンパー並に場所を取るとんでもない代物だったが、内燃機関を使っていることもあって飛行性能は今までの課題作品と比べても圧倒的に上だった。
エンジンパワーに物を言わせ空気抵抗とかコンパクト化とかを無視。
頑丈さが良くわかるフレーム構造。
3人位は平気で乗れる積載力。
ガソリン満タンにしておけば余裕で30分は飛行できる実用性。
ちょっとでも魔力があれば操縦可能な汎用性。
まだ評価点は公表されていないが、今までにない方向性の代物だけに高評価が期待される。
まあそれはともかくとして。
「そろそろバネ工場の移転も考えたほうがいいでしょうか」
「そうだな」
問題はこっちの方だ。
香緒里ちゃんの言葉は俺も考えていた事。
来年度を過ぎれば俺も香緒里ちゃんも学生会を卒業する。
その際は当然、この学生会の工房を使えなくなる。
どっちみちここを出ていかなければならないのだ。
ならば今のうちから手頃な移転場所を探しておいた方がいい。
「でも魔技大のレンタルラボじゃ小さいし、使いにくいしな」
「出来れば車を横付け出来て、ここから近い場所がベストですけれど」
本来そういった用途に相応しいのは特区公社運営の研究団地。
そしてその中の貸し工場や貸倉庫だ。
でもこれらは空港側の台地にあるので学校から遠い。
高専や魔技大で学生をやりながら仕事するなら、もう少し近い方が嬉しいのだ。
まあ本土の、特に東京のあたりの人が聞けば何と贅沢なとか、3キロなんで近いうちだと言われそうだけれども。
「とりあえず今日、帰りに役所でも見てくるか」
役所そのものはGWでお休み。
でも貸しラボやレンタルスペース等の公告はいつでも閲覧可能になっている。
「そうですね。今のうちから探しておけば、いい場所もあるかもしれないです」
「なら、とりあえず5月分は何とか片付けるか」
「そうですね」
とりあえずバネ作業に集中することにした。
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