第250話 そしていつもの金曜夜

 パーティが始まる。

 メニューはフライドチキン、ピザ、フライドポテト、ツナサラダ、ごぼうサラダ、ポテトサラダ、エビチリ、鶏照り焼きといった感じ。

 要はいかにもありそうなパーティ料理だ。

 どうぜ奈津季さんが適当に冷凍食品やら何やらで作ったのだろうけれど。

 本当に器用だよなと思いながら食べつつ、周りの様子を観察する。


 古い連中やロビーは問題ない。

 というかロビー、完全にもう溶け込んでいやがる。

 今も香緒里ちゃんと詩織ちゃん相手に、何やら制作論を戦わせている。

 無口で朴訥だという触れ込みはどこへ消えたんだ。


 逆にちょっとぎこちない感じなのが今日から参加の女子2名だ。

 理奈ちゃんの方はまだいいとして、愛希ちゃんの方はがちがちに見える。

 ならちょっと助力してくるかな、と思った時。


「大丈夫ですよ」

 風遊美さんに止められた。


「ルイス君も頑張っていますし、奈津季も他の人も色々考えているようです。少し様子を見るのが正解です」

「そうですね。翠以外はちゃんと気にしているようですよ。翠はあの性格だから、逆にそのままでもいいと思いますし」


 成程、風遊美さんも月見野先輩もそう見ているなら大丈夫だろう。


「それよりうちのロビー、何かこっちへ来て以来ずっとあんな状態で。ああいうロビー、アンティコスティでは見た事ナッシングです」

「あれこそ修のせいれすね」

 俺は北米出身女子2人に責められる。

 確かに微妙に否定できない。


「でも修君に対処させるのは無理でしょう。むしろ悪化させてしまうと思いますわ」

 月見野先輩が酷い事を言っているが、これも否定できない。


「温かい目でみてあげるしか無いと思います。そのうちちゃんと気づいてくれると思いますよ」

「修も大分変わったれすからね」


 風遊美さんのフォローはともかくジェニー、お前の台詞は余計だ。

 そして月見野先輩、頷かないでくれ。

 俺が傷つく。


 ◇◇◇ 


 飯が終われば当然風呂の時間になる。

 で、俺とルイスは例によって樽湯に避難している。

 今日は特に人数が多いので大変に危険だ。


 なおロビーは全く気にしていない模様で、今はメインの浴槽に長々と伸びている。

 今日からの1年女子2人は、愛希ちゃんの方は最初ちょっと抵抗がある感じだったが、完全に今ではもう溶け込んでいる感じだ。

 今では愛希ちゃんも横で伸びているロビーを気にせず、奈津希さんと鈴懸台先輩と3人で何やら話をしている様子だし。


 ただロビー、少しは隠せ!

 今この場所では言えないけれど。


 俺の愛しのぬる湯は風遊美さん、ジェニー、ソフィーの北国出身者に占拠されているし、薊野姉妹と月見野先輩は歩ける風呂とサウナ2種をぐるぐる回って美容に余念が無いようだ。

 理奈ちゃんはジェットバスに浸かりながらにやにやと周りを観察中。

 ん、誰か抜けている気が……


「やっぱり修先輩の設定温度はぬるいですねえ」


 いきなり声がするとともに、目の前に何かが現れた。

 お湯が一気に出現した体積分、流れ出る。


「何なんだいきなり」

 いきなり詩織ちゃんが出現したぞ。


「新魔法の披露なのですよ。ついにルート設定なしでも短距離なら自由に移動できるようになったのです」

 そう言うとともに姿が消え、がっとお湯が減った樽湯だけが残る。

 そして隣の樽湯に……


「やっぱりルイスの湯加減が一番ですね。ちょっとお邪魔するですよ」


 ルイスの声にはならない悲鳴を、俺は確かに聞いた。

 頑張れルイス、負けるなルイス。

 とりあえず陰ながら応援はしているぞ。

 俺も詩織ちゃんには勝てないから応援だけだけどな。

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