第235話 温水プールでまったりと

 昼食を食べてもまだ12時過ぎ。

 なので今度は温水プールで時間を潰す。


 ここのホテルは宿泊客であれば温泉もプールもチェックイン前から使える。

 使えるものは使わせてもらおう。


 施設自体は思った以上に広い。

 温泉プールも泳ぐようなプールはないものの、色々な設備がある。

 のんびりと露天のワイン風呂に浸かっていると、あちこち探検中らしい詩織ちゃんと会った。

 ちなみに混浴部分は水着着用なので安心だ。


「色々な色のお湯があるですね」

「皆はどうしてる?」

「バラバラなのです。でもアクアゾーンの中にはいるです」


 アクアゾーンというのは混浴の室内エリアだ。


「ジェニーさんとソフィーはジャグジーで伸びているです。あとは皆結構あちこち動いているです」


 ジェニーとソフィーはさっきのバイキングでまた食べ過ぎていた。

 なので動くのも面倒という状況なのだろう。


「では全浴槽の制覇の続きに行くです」

 そう言って詩織ちゃんは去っていく。


 そう言えば詩織ちゃんも少し体型が女の子らしくなったかな、とふと思った。

 何せいつもの露天風呂では裸なのでちゃんと確認できないし。

 でも夏に水着を見たときよりは大分成長している気がする。

 それでもあの大食いの内容が何処に消えているのかは謎だ。


 風遊美さんが歩いてくるのが見えた。

 俺を見つけてこっちにやって来る。


「中よりこっちの方がいいですね、空気が冷たいですけれど、中はどうしても私には蒸し暑く感じて」


 そう言えば風遊美さんは北国出身だったし、風呂も常にぬる湯だったな。


「確かにお湯があればこれくらい外が寒くても気持ちいですね。島では感じられない寒さだし」

「そうですね。日本以外の特区は寒い処ばかりなのに」


 そう言われればそうだ。

 EUの魔法特区もアメリカ・カナダ合同の魔法特区も。


「暑いの苦手といえば、ジェニーは大丈夫そうでしたか」

「そろそろ暑くなってこっちに来る頃だと思います。動く気になればですけれど」


 つまり風遊美さんが見た時点では回復していない、と。


「それにしても楽しい旅行です。こんなに楽しい旅行は始めてです」

「まだ3日めですよ。それに夏も行くんでしょ」

「そうですね」


 前と違ってちゃんと微笑んでくれた。

 ちょっと一安心。


 ソフィーがやってくる。


「もう大丈夫?」

「消化作業コンプリートですよ」


 そう言って赤ワインの湯に浸かる。


「ワインの湯とはブルジョワ気分です」

「まあ安い奴だろうし凄く薄めているんだろうけどね」

「でもちゃんと香りがあります」


 確かにほのかにワインの香りがする。


「そう言えばジェニーは」

「ジェニーさんはまだしばらく湯治中です」


 湯治というのだろうか、あれは。

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