第232話 伝統行事ピローファイト!

 食事もなかなか良かった。

 何品あったのだろう。

 20品は軽く超えている。


 魚だけでも焼き鮎や刺身3点やアマダイや……

 あと和牛しゃぶしゃぶも美味しかった。

 最後デザートの杏仁豆腐まで食べるとお腹いっぱい。

 満足して部屋に戻る。


 風遊美さんと奈津季さんと香緒里ちゃんはもう一度風呂へ。

 今度は女性専用の露天に行ってみるそうだ。


「文献だとそろそろ枕投げの時間れす」


 ジェニー、何の文献だよそれ。


「今は修学旅行じゃないし、他にもお客さんがいるだろ。煩いし迷惑だから駄目」

「でも3階には他に泊まっているお客さんはいないようれすよ」


 出たな人間レーダー。


「それに枕投げなんて文化、俺も実際には知らないぞ」

「それは私達が知っているのれす。ねえソフィー」

「ええ、任せて下さい」


 という事で、なし崩し的に枕投げ大会のセットが始まる。


「今回は人数が少ないのでシンポールールで行きます。

 1チーム2人。この真中の選から手前が自分の陣地で、そこから出られません。

 枕を双方投げあって、当たるとアウトです。

 枕は掛布団で防ぐことが出来ます。ただ掛布団は組になっている敷布団より外に持って出るとアウトです。

 アウトになると陣地から外へ出て何も出来ません。

 2人ともアウトになると負けです」


 そんなルールがあるのか。

 俺は始めて知った。


「では最初は日本人チーム対北アメリカ連合なのれす。ルイスは強そうなので最初は審判れす。

 審判は『開始』の宣告と『アウト』の宣告をするのれす。例えば私がアウトなら、『ジェニー、アウト』と宣告するのれす」


「アウトの条件は掛け布団で防御できずに枕に当たる、それか掛け布団を持って組になった敷布団から出るでいいのか」


「その通りです。敷布団外の判定は足で、足がちょっと出ただけでもアウトです。持っている枕に枕が当たるのはセーフなのれす」

「わかった」


「ではスタートなのです。最初は双方脚を向けて掛け布団をかけて寝ている姿勢からスタートなのれす」


 色々ルールが細かい。


「では、開始」


 飛び起きて掛け布団を左手に掴んで防護体勢を取りながら枕を右手で掴む。

 飛んできた枕を掛け布団で落として隙を伺う。

 なかなか動けない。お互い同じ姿勢で睨み合う。


 ならば。

 俺は枕をもうひとつ手元に寄せ、そして弓なりの機動で手前のジェニーを狙う。

 とっさに布団でジェニーが防御する隙に思い切りよく枕を投げようとする、だが。


「修先輩アウト」


 無情にもソフィーちゃんの枕が手元に当たってしまった。

 だが俺の動きは無駄ではなかったようで、


「ソフィー、アウト」


 詩織ちゃんがしっかりやり返してくれたようだ。

 そして残った2人の持久戦。

 お互い手元の枕はあと1個。

 そして……

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る