第226プラス話 その2 対戦!グレムリン!

「それより修の方は大丈夫か」

 そう言われて、俺はあわててキッチンの自分の位置に戻る。

 既に5枚焼き終わっていたホットケーキが全て姿を消していた。


「ホットケーキ5枚消失です。この犯行手口、間違いないですね」


 そう、鍵のかかった室内でも全く関係なく入ってきて、デスソースを使い、ホットケーキを食べていく。

 その正体は常に腹ペコな空間魔法使い、田奈詩織だ!


「しかし何故、こんな犯行を」

「暇だったのと腹が減ったので理由は十分だろ。詩織ちゃんあいつは特にここにいる3人なら多少の事は大目に見てくれると思っているようだし」


「その傾向は認めます。では、とりあえずこのフルーチェから混入物は除去します」

 今では俺も成分調整魔法とまでは行かなくとも、それに近い魔法は使える。


 逆にしおりちゃんもその事を知っているからこの犯行に及んだのだろう。

 今回の目的はあくまで俺のホットケーキと見た。


「とりあえずグレムリンの出現には注意しよう」

 との事で調理再開。

 審査魔法で小豆の具合を見ながらホットケーキ焼きを再開する。


「これ以上減ると取り分を大幅に減らすからな」

 一応あらぬ方向に警告をしておく。

 そして念のため、ホットケーキのサイズを更に小さくしてミニドラサイズに。

 幸い、しばらくの間は何も無かった。

 


 しかし。


「!!!!!」

 ルイスがダッシュで洗面所へ。


 よく見ると作業用に横に置いていたコーヒーをこぼした跡がある。

 さらに審査魔法で見ると、コーヒーになぜかカプサイシンが。


「また出たな」

 奈津希さんの声。


 俺はミニホットケーキの方を意識しつつ。

 あえてルイスの方を心配する振りをする。

 そして、その時は訪れた。


「うわっ、うわうわうわうわあああ……」

 突然現れた小柄な影は、その場でくるくる回って倒れ込む。

 捕獲成功だ。


「何なんですかこの魔法はああああ。回りがくらくらする……」

「俺の対人魔法も進化しているんだ。悪いな」


 前に使った、運が悪ければ廃人になる『大脳特定部位電気刺激魔法』ではない。

 今回使ったのは、新たに開発した『三半規管濁流魔法』。

 短時間だが人の平衡感覚を無茶苦茶に狂わせる魔法だ。

 これならほんの少しの液体を動かすだけで成立するし、後遺症も無い。

 そして効果は短時間だが効果は絶大だ、

 特に空間魔法使いには。


 そして詩織ちゃんの手元からさっきと違う赤色液体の瓶が落ちる。


「ウルトラデスソースか。日本で販売していない危険物だ」

「せっかく手に入れたから、皆とわかちあいたかったのですよ」


 詩織ちゃんはまだ立ち上がれない。

 新魔法の効果は絶大なようだ。


 ちなみに俺が自分で試した時は、効果時間は約3分。

 それ以内に次の処理をする必要がある。


 俺は倒れたままの詩織ちゃんを抱える。

 そして、奈津希さんとルイス君の作業場になっているテーブルへ……

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