第226話 チョコの当たりは誰の手に

 まずはケーキ本体から。

 うん、文句なく美味しい。

 中に甘酸っぱいジャムが仕組まれていて、チョコ部分のちょっとシャリシャリした感じも含めて美味しい。

 付け合せで甘くない生クリームが付いているのがよくわかる。

 セットでとても美味しい味だ。


 キノコタケノコやハートは普通にチョコレートとしてとても美味しい。

 何故かハートがややにが目で、キノコが甘いのは逆な気もするけれど。

 薔薇はまさに正しいクリームの味だ。


 ほぼ満足して食べきった中、最後に残る球体。

 見るとまだ誰も手を付けていない。

 俺は魔法を使えばどれが当たりかわかるのだが、さっきも言ったように無粋なのであえてそれはしない。

 なので意を決して、球体を口の中に放り込む。


 あ、これはなかなか美味しい。

 ただのチョコの球ではなく、色々中に仕組んである。

 ケーキと同系統の味で、なかなか美味しい。


「美味しいな、これ」

「中はチョコムースと杏ジャムです。ケーキに使った材料を分けてもらったです。ハズレの方は、ですけれど」


 俺のチャレンジ成功を見て、徐々に皆試していく。


 そして、ついに。


 詩織ちゃんが突如口を押さえ姿を消した。

 そしてキッチンに出現し水を流しながら無茶な姿勢で口を濯いでいる。


「自業自得だな」

 俺の台詞に全員が頷いた。


「ふふぇーん、ひろいれす。これしたおかひくなるれす」

「どういう状態で仕込んだんだよ」

「チョコムーふにきっちり1ミリリットルまへたたけれす。これきひしひれふ」


 言葉がまともに喋れていない。

 水だけでなくキッチンペーパーまで使い、更に某清涼飲料水で口の中を拭き、やっと詩織ちゃんは戻ってきた。


「思った以上だったです。流石1万スコヴィルです。ルイスで口直しするです」


 詩織ちゃんは残していたルイスの頭部分を口の中に放り込み、噛みしめる。


「やっぱりルイスはいい奴です。生き返ったです」


 詩織ちゃんは同学年男子の頭部部分(10分の1)を食べて復活したようだ。


「これに懲りて少しは反省するように!」

 一応同じ科の先輩としてしめておこう。


「今度は4分の1で混ぜるです」

 やっぱり懲りていない。


「あんまり懲りないようだと、ホワイトデーのお返しにリアル詩織型ションベン小僧のチョコを作るぞ」

「それだとしゃがんだ像になるので格好悪いです。ビーナスの誕生バージョンでお願いするのです」


「諦めろ、体型的に無理だ」

「セクハラなのです。胸パットの使用を認めて欲しいです」


 セクハラと言いつつ自分で胸がない事を認めていやがる。


「何なら某国産平和の少女像で妥協してやる」

「あんな由来もいい加減なパチもんは嫌なのです」


「ここは日本れすから、邪神モッコス像なんてどうれすか」

「あんな目が怖い変態ポーズ可能な像は嫌なのです」


 ジェニーも詩織ちゃんも下らないもの知っているな。

 俺もわかるけれど。


 そんなこんなで賑やかに時間は過ぎていく。

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