第225話 分けるだけでも一悶着

 ケーキ披露の後は、とりあえず甘い物は夕食後という事で夕食会になる。

 まあ実情は毎日が夕食会なのだけれど。


 今日のメニューはつけ麺だ。

 野菜やチャーシューは自分で大皿から好きなだけ取って添える方式。


「今日はデザートが豪華だから、夕食は簡単にしたよ」

 と奈津希さんは言うけれど、充分に美味しい。

 つけタレもさっぱり醤油と胡麻ダレと2種類用意しているし。

 ジェニーや詩織ちゃんがわんこそばの如くおかわりしているが大丈夫だろうか。


 そしていよいよケーキ登場。


「例によって9等分だから修、頼むな」

 との事で、魔法で正確に40度ずつ9個に切り分ける。


「ボールも必ず1個ずつ取るですよ。敵前逃亡はデスソースの刑ですよ」

 骸骨ラベルの見るからに不吉な小瓶が威圧するようにテーブル上に置かれる。

 しょうがないので俺も目の前のを1個取る。


「製作者は当たりがどれかわからないのか」

「完璧に仕上げたので私でも当たりはわからないですよ」


 確かに仕上げは見事だ。

 綺麗な球になっている。


「デスソース入り部分と外側をコーティングしたチョコは別なので、臭いでも色でも判別出来ないですよ」


「修、審査魔法で分別出来ないか」

「出来ますけれど無粋でしょう」


 実は奈津希さんは辛いのが苦手だ。

 中華料理やカレー等も辛さ控えめに作る。


「そう言えばこのルイス像はどうする。9分割するか」

 ダビデ像のポーズを取ったルイス像、高さ16センチ強は結構大きい。


「9人らから、脚を膝で2分割して胴を2分割すれば9個になるれす」

「よく出来ているのに勿体無いな。何ならコーティングして残しておくか」


「頼むから止めてくれ」

 モデルから苦情が入った。


「なら9分割でしょうか。それも残酷な感じですけれど」

「諦めましょう。所詮はチョコレートです」


 話が進まなそうなので、俺は魔法でジェニーの提案通りの9分割をかけた。


「ギャー」

 詩織ちゃんが悲鳴の効果音ををあげる。


 そして結果を見た俺は少し後悔した。

 頭というか、首から上部分が妙にリアルに残っている。

 あと胴体の下部分、イチモツがにょっきり生えている。

 かくなる上は。


「9分割しました。1人1個です」

 と宣言して、俺は真っ先に一番無難な足の先部分をキープさせてもらう。


 俺と同じ事を思ったのだろう。皆さっさと無難な部分を取っていく。

 そして残ったのは、頭部分とイチモツ付き胴体下部分。


「ソフィー、どっちがいいですか」

「私はチョコが多いほうがいいから、胴部分かな」

「なら私は頭部分を頂くです」


 危険な部分は1年女子で分け合ったようだ。

 他にハートや薔薇やキノコやタケノコも均等に配る。


「それでは改めて、頂きます」

 と、やっとケーキを食べ始める。

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