第224話 今年は共同制作です
玄関扉を開けた瞬間、甘い匂いが漂ってきた。
「さあどうぞ、ここに座って」
という事で、俺とルイス君は長いテーブルの短辺、つまりお誕生席に2人横並びで座らされる。
「今年は全員で共作したんだ。どうせ最後皆で食べるなら美味しくて満足感が高いのを作ろうってね」
そう言って奈津季さんが持ってきたのは、巨大な茶色いケーキ。
色々と装飾が乗っかっている。
「ケーキ部分は伝統的なホテルザッハーバージョンのザッハトルテ。甘くない生クリームまでがオリジナルで、あとの飾りは色々作った人の主張があるから聞いてみな」
「今年は水着バージョンは無いですよね」
「一応去年のを持ってきたけどね、風遊美に止められた」
ルイス君は何の話だろうという感じ。
だが1年の他2人は聞いて知っているらしい。
改めてケーキを観察する。
綺麗にチョコが塗られたケーキのあちこちに色々な装飾物がある。
小さいピンクのハート型多数はまあわかる。
クリーム製らしいピンクの薔薇の花もまあ良いとしよう。
でも他にベニテングタケみたいな赤いキノコとか、タケノコ形のチョコとか、妙に真ん丸な球形のチョコとかは微妙だ。
更にケーキの中心には見事としか言いようのないチョコレート製ダビデ像がそびえている。
何だかニコニコ動画とか前衛芸術的な仕上がりだ。
「今のうちに飾りの意味を聞いておいた方がいいかな」
「そうね。私と奈津季は基本的にケーキ部分メインで作ったから、あとはそれぞれ解説お願いね」
と由香里姉。
由香里姉がケーキ部分を作ったって聞くとちょっと味が不安になる。
まあ奈津希さんが監督しているんだろうし大丈夫だろうけれど。
「じゃあまず無難なところで、このハート型は」
「私です。まずは愛をこめてという意味で」
この一番無難でまともなのは風遊美さんか。
「ではこの薔薇は」
「私です。意味も風遊美さんと同じです」
香緒里ちゃんか。
まあここまでがまともな部類。
「この赤いキノコは」
「私。日本には有名なキノコのチョコがあると聞いて作りました。キノコは日本らしくスーパーマ●オのキノコです」
ソフィーちゃんか。という事は、
「タケノコはジェニーだな」
「正解れす。キノコのチョコがあるならタケノコも当然必要れす」
聞くと長そうなので深くは聞かない。
ちなみに俺はタケノコ派だ。
「じゃあこの球体は」
「私ですよ。それは上のダビデ像と対なのです」
やはり
「まず像の方は、ダビデ像の格好をしたルイスなのれす。縮尺10分の1でかなりの自信作なのです。おちんちんの形と長さも実物準拠なのです」
おいおいと突っ込みを入れたくなるが、確かによく見ると顔と髪型がルイス君だ。
相当な技術力だけは認めざるを得ない。
「じゃあこの球体は」
「当然、修先輩なのです。うちの親父が『修は凝った面白い物を作るが最適化が甘い』と常日頃言っているので最適化テーマでつくったのです。なお人数分あるので必ず1人1個取るのです。実は中に当たりが1個あるのです」
何だそりゃ。
「要は俺はただの名目で、当たり付きチョコを作りたかっただけじゃないのか」
「そうとも言うのです。当たったら使用したデスソースをプレゼントなのです」
随分とタチの悪い物を入れているようだ。
「技術力は認めるけれどさ」
横でルイス君が赤くなっているぞ。
「確かに詩織の技術力は凄いよな。僕もチョコでそこまでの細工は自信がない」
「実は細かい部分はアメで作って薄くチョコをかけているです。指はともかくおちんちんの皮がそのせいでちょっと厚く表現されてしまったです。そこが唯一の反省点なのです」
反省すべき点はそこじゃない。
「女の子は食卓でそういう単語を言わないの。そっちを反省して欲しい」
「では次から男性器と言うです」
反省していないし懲りてもいない。
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