第223話 男同士密談中(3)
考えても答は出ないのが明らかなので、正直な処を答えさせてもらう。
「もしその本命というのが、将来ずっと一緒に人生を歩いていきたいという意味で好きな相手と定義するのならば。俺はまだそう意識した相手はいない」
「僕が言うのも生意気で失礼かもしれないが、それはないと思う。どう見ても風遊美先輩も奈津希先輩もジェニーさんも香緒里さんも修先輩に好意を持っているだろう」
「失礼でも生意気でもないさ。俺も認める。奈津希さんは実はちょっと違うんだけどな。俺自身困った事に全員好きだし魅力的だと認めているんだ。ただ俺がわからないだけだ。そういう意味で好きという事が。
奈津希さんは前に『修も相手も本当は知っているんだ。でもそれに気づいていない』って言っていたんだ。でも俺にはわかっていない」
そう、俺は今でもわかっていない。
奈津希さんはゆっくりでいいと言ってくれたけれど。
「奈津季先輩は気づいたって事か」
「あの人の視野は色んな意味で普通じゃないから。風遊美さんはわからないって言っていたし。あ、これ2人の会話がたまたま聞こえただけだから他に言うなよ」
「わかった」
ルイス君は暫く考える。
「僕は風遊美先輩か奈津季先輩、香緒里さんか由香里先輩の4人の誰かだと思っていた。ジェニーさんとも仲はいいけれど、修先輩が相談する相手は修先輩より先輩の3人だし、日常的には香緒里さんとよく一緒に行動しているし。でもその台詞だと奈津季先輩ではないという事か。僕は一番可能性が高いのが奈津季先輩だと思っていたんだけれど」
「確かに奈津季さんは何でも知っているし、相談しやすいからな」
「僕もそう思う。でも僕が見た限りではそれ以上はわからない」
まあ風遊美さんがわからないなら、ルイス君もわからないよな。
「俺の方はそんな処だ。ちなみに1年の方は?」
ごまかし半分で俺は聞いてみる。
「ソフィーは向こうに年下の恋人がいるらしい。今年ひょっとしたらここに来るかもしれないと言っていた。詩織は……独特すぎてわからない」
それはよくわかる。
「確かに詩織ちゃんは独特だよな。いい奴だけれど」
「そうなんだ。頭もいいし性格だって独特だけど悪くない。おそらく僕より強いけれどそんな態度を取ることもない。成績だって文句なく良いんだろ、科が違うからよくわからないけれど」
「今の魔法工学科1年ではダントツらしいな。親父兼担当教官がこの前プリン食べながら自慢していた」
詩織ちゃん専用プリン貯蔵庫、今では完全に公認されてしまっている。
親父も時々詩織ちゃんと一緒にやってきて、2人で食べて帰ったりしている。
補充も常に完璧な状態だが、いいのか本当に。
「だから
おー、これは思春期に見られる典型的な男子的思考と思っていいのかな。
前にソフィーちゃんが『ルイスって詩織の事を凄く意識しているんですよ』って言っていたとジェニー経由で聞いていたが、確かにそのようだ。
他人事だと客観的に見れるな。
「それはこれからだと思うけどな。ルイスだって攻撃魔法科1年筆頭だろ」
「現時点ではだ。実力は拮抗している」
「ならこれから充分伸びしろあるんじゃないかな。あいつはプロの潜入工作要員として訓練受けていたらしいし、今の時点でルイスが不利なのはしょうがないだろ。それに詩織ちゃんがそんな事気にすると思うか」
「思わない。けれど……」
ルイスの気持ちもよくわかる。
でもここは先輩として軽くプッシュしておくべきかな。
「ルイスは詩織ちゃんの事を嫌いか」
「それは絶対ない!」
よしよし、わかり易い反応だ。
「ならそれで今はいいだろ。
強い弱いなんてのもまた状況で変わるしな。
それに悪いが、弱いと言えば学生会最弱は文句なく俺だぞ」
実際俺は、ソフィーちゃん含む攻撃魔法持ちは勿論、ジェニーの義足にすら多分勝てない自信がある。
「でも詩織が言っていたぞ。本当は修先輩は凄く強いって。相手が軍隊だろうと著名人だろうと一歩も引かず圧倒し続ける位に強いって」
「去年6月の時も学園祭の時も、終了後に再起不能状態になったけどな。それに去年の1月には工作員に襲われて両腕バッサリ切られたりしたんたぜ。香緒里ちゃんに助けてもらったけれど」
「……失礼だけど修先輩も、見かけによらず色々修羅場を潜ってたんだな」
「本質的には軟弱だから、出来れば揉め事は遠慮したいけれどな」
時計を見る。午後5時55分。
さて、そろそろ
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