第221話 男同士密談中(1)
1月はあっさりと過ぎた。
入学試験等で休みの日が多いせいでもある。
来年度予算案も無事可決され、学生会の仕事は苦情・要望の処理のみ。
そして2月の5日から9日までの期末試験も無事終わって。
そして2月半ばのあの日になる。
どこぞの聖人が虐殺された記念日だ。
俺とルイスは午後6時までマンションに戻るなという指令を受けている。
なので2人で定刻まで学生会室に居残りだ。
俺が例の論文整理作業をやっていると、ルイス君が俺に声をかけてきた。
「修先輩、聞いても大丈夫か」
「何でもどうぞ」
考えてみればルイス君と2人というのはあまり無い機会だ。
大体ルイス君は奈津季さんか1年同士で組むことが多い。
だから俺とあまり接点がない。
一緒なのは露天風呂で2人で地蔵になっている時位だ。
それでも入っている湯船は違うし。
「修先輩は奈津季先輩の事をどう思っているんだ」
どう思っている、の詳細がわからないのでまずは無難に答えてみる。
「尊敬すべき先輩さ。何でも出来るし何をやってもそつがない。軽いように見えて常に冷静だし常にずっと先を見て行動している。ある意味理想に近いけれど真似出来ないな」
「それでは、奈津季先輩が卒業したら進学しないで
やはりその質問が来たか、そう俺は思う。
奈津季さん本人には聞けないし、風遊美さんにも聞きにくい。
消去法で一番聞きやすくてかつ事情を知ってそうな俺がきっと聞かれると思っていたのだ。
「本人の意思なら俺は何も言えない。さっさと目標達成して帰ってこいとしかさ」
「言えない、じゃなくてどう思っているんだ」
あ、ルイス君も日本語の微妙なニュアンスがわかるようになったか。
「本音を言えば勿体無いし惜しいと思う。ここの魔法攻撃科で主席キープなんてそう簡単に出来る事じゃない。それだけの腕と実力があれば魔技大でも充分に通用するだろうし」
ルイス君は頷く。
「僕もそう思う。
一緒に訓練して感じるんだ。あの人は強い。他の人とは異質に強い。
魔力が決して強い訳じゃない。色々な魔法を使えるから強い訳じゃない。
魔力だけなら僕のほうが今ではきっと強い。
でも風の魔法しか使わない状態の奈津季先輩に勝てない。
僕だけじゃない。4年の先輩には他にもいくつか属性を持っている人もいるし、魔力が奈津季先輩より強い人も何人かいる。それでもあの人には勝てない。
由香里先輩だって、あれだけ魔力に差があるのに事実上痛み分けという感じでしか勝ちを拾えない。多分本気で防御に徹した奈津季先輩を崩せない。
冬休みに詩織と2人がかりで戦った時も、範囲無制限ならきっと勝てなかった。それなのに……」
言いたい事は多分俺にもわかる。
実際俺も勿体無いとか感じていないわけではないのだ。
「それでも俺は、奈津季さんが出ていくのを止めないし止められない。奈津季さんが決めた事を信じるしか無い」
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