第217話 臭い臭いは取れたかな?
「30日に北欧出身の会があって、デンマーク、ノルウェー、フィンランド、スウェーデンやアイスランド等出身の学生が集まってパーティをしました。
あの缶詰はパーティの余興に用意したものです。3個用意したのですが1個開けた時点で皆が『もういいよ』という感じなったので、1個を頂いて帰ったんです。
奈津季の本気であせった表情を久しぶりに見ました」
「あの時の奈津季さんは面白かったれす。魔法で大量の水を出して被って、それでも臭いが取れなくて学校の水道で水かぶってたれす」
「言っておくけれど、本気で臭かったんだぞ。人生で最悪で最低な臭いだ」
「通称世界一臭い食べ物ですもの。でも奈津季が何も用心せず開けるとは思いませんでした」
「まさかシュール・ストレミング渡されるとは予想すらしてなかったからな。外で渡された事とその場で開缶してと言われた事にもう少し疑問を持てばよかった」
状況は大体わかった。
「悔しいから今度学校で皆で食べようぜ。ついでにくさやとかホンオフェとかも用意して」
「俺の工房を汚染しないで下さい」
俺の制作にかなりの影響が出てしまう。
今いるのは例によって露天風呂。
ぬる湯とメイン浴槽と寝湯は場所が近いので、顔を寄せて話している。
ちなみに由香里姉と香緒里ちゃんは正月に食べすぎて体重が増えたいう理由で、歩ける風呂とサウナとミストサウナを行ったり来たりの状態だ。
別に太ったようには見えないし、今のままで十分魅力的だと思うのだけれど。
「もう僕の臭いは取れたよな」
「もう大丈夫ですよって、何度も言ったのです。一昨日は一日中ここで浸かっていたようですけれど」
「どうしても気になるんだよな。自分ではわからないものだし」
「俺の分析魔法で見てももうそんな成分は見えないです。だから安心して下さい」
「ならいいけどな」
そんなに酷い臭いだったのだろうか。
「ところで他の皆さんはいつ戻ってくるんでしたっけ」
「6日だな。ルイスは乗り継ぎ次第で7日になるかもしれない」
明後日にはまた賑やかになるのか。
「そう言えば詩織、あいつ無茶苦茶強いんだぜ。年末に何回かソフトチャンバラやったけど、間合いのとり方とか完全に武術経験者だぞ。空間魔法が強力すぎて何処にいるか何処へ出てくるか全く掴めないし。風遊美より戦いにくい相手は久しぶりだ」
「私も空間魔法は使えるので、何処に出る可能性が高いかはわかるのですけれど。それでも間合いのとり方や攻撃タイミングなんかの面で勝てないです」
「本人は『北斗神拳の伝承者なのですよ』とか言っていたけどな。確かにあれは本来拳や掌で戦う感じだな。間合いがごく近い上に身体が小さい事すら利点にしているから、正直すごく戦いにくい」
「それでも奈津季は強引に勝っていましたけどね。かなり反則な技で」
「あれは本来風遊美相手に開発した技だぜ。通称風雲無心剣」
「要は周りに風を起こして、風の乱れを感じた瞬間反対側に避けながらそっちに剣を振り下ろす、ってだけですよね」
「他に方法がなんだからしょうがないだろ。攻撃魔法科4年筆頭の名にかけてそうそう負ける訳にもいかないし。でもあれ、無刀の方が間違い無く強いぞ。同じ条件にしたらうちのクラスでも9割喰われるな、あれ」
「ルイス君もやっぱり強いですしね」
「あいつの空中浮遊こそ反則技だろ。剣が届かないし投げても風で落とされるし。1対1なら風の応用技で何とか勝てるけど、あんなの何人も相手にできやしない」
「ルイスくんと詩織ちゃんの両方相手では、筆頭さんも勝てませんでしたしね」
「あれは絶対無理ゲー。どっちかを意識した瞬間、もう1人に隙を突かれるんだぜ。あれで勝てる人間居たらお目にかかりたいよ、まったく」
年末4人でよく出ていくと思ったら、そんな事をしていたらしい。
「まあ詩織ちゃんの戦闘能力、もう実際に使わないで済めばいいんですけどね」
詩織ちゃんが自分の胸を突いて自殺しかけた事、そのおかげで俺達が助かった事はここの面子は皆知っている。
「ああ、全くだな」
奈津季さんがそう応え、皆頷いてくれた。
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