第17章 臭い缶詰とチョコケーキ ~冬の章・後篇~
第216話 ホーム・スイート・ホーム
本土のホームセンターは便利だ。
島だとカタログ調べて寸法調べて送料調べる必要のある材料を、実物を手にとって確認した上で買う事が出来る。
千葉県北部にある日本最大との名も高い某ホームセンター。
そこで大量に買い物をして満足の俺は、正月明けの聟島空港に降り立った。
ちなみに手荷物のスーツケースには留守番のジェニーと風遊美さんと
俺が買った材料類は船で後送だ。
例によって由香里姉運転のマイクロバスで帰り、マンションの部屋でジェニーとやっぱり中に居た猛獣様のお迎えを受ける。
猛獣様をお土産のスイーツで懐柔し、ついでに猛獣様が入れてくれた紅茶で一服。
「この部屋で奈津季が入れてくれた紅茶をいただくと、帰ってきたなという感じがするわよね」
「すみません奈津季さん」
「いいのいいの。キッチンは僕の領地。ついでに修のベッドも僕の領地に組み入れてくれれば毎日でもサービスしちゃうよ。もちろん修も付属で」
「うーん、最近はそれもいいかと思い始めているかも」
「やめて下さい」
といつもの会話。
確かに俺も今ではここが俺の家って感じだな。
実家よりもずっと。
由香里姉がいて、香緒里ちゃんがいて、ジェニーもいて奈津希さんもほぼ常駐している。
風遊美さんを始め学生会の面子がちょくちょく遊びに来て、時々ルイス君が酷い目にあう。
これが俺の日常だ。
確かに本土より不便な事は山程あるけれども。
実は奈津希さんに聞きたい事があるのだが、ずっと聞けないでいる。
卒業とともに島を出る、という話だ。
聞けば答えてくれるとは思うのだが、何となく聞きにくい。
聞いたら何かが壊れてしまうような気がして。
「あと、これは年末に消費した補填分です」
ケーキをぱくついている奈津季さんの前にボトルを3本置く。
例の『奈津季さん曰く清涼飲料水』だ
実はこれも探すのは苦労した。
普通の酒屋や酒を置いているスーパーには無く、かなり大きい酒専門店でやっと見つけた代物だ。
なおかつ未成年が購入すると煩いので、うちの父に買ってもらった。
値段は結構安いのだけれど。
「あ、気にしなくても良かったのに。でもサンキューな。いつもと違う銘柄だから楽しみだ」
猛獣様は喜んでくれたようだ。
「そう言えば風遊美さんは。確か島居残りでしたよね」
「風遊美は暗くなる頃やってきて、飯を食べて風呂へ入って帰っていくという感じだな。年末は3人で年越し蕎麦も食べたんだぞ。納豆そばを前に固まっていたけどな」
「年始に強烈な缶詰で仕返しされたれすね」
「あれは酷かったな。北欧伝統料理の缶詰と聞いて喜んで開けたらいきなり強烈に臭い汁が飛んできてな。本人はジェニー連れて空間移動で逃げるし僕は髪に汁がかかって臭い取れないし。悔しいからマイナス180度に冷凍してビニール3重にして冷凍庫に封印してある。あとで解凍して皆に食べさせてやる」
「頼むから凍らせたまま破棄して下さい」
風遊美さんはどこでそんな缶詰を仕入れたんだろう。
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