第213話 いつか懐かしい日々(1)

 結構皆、プレゼントを気に入っているようだ。


 一番わかり易いのがルイス君と詩織ちゃんの2人。

 詩織ちゃんはネックレスを付けて浮かれているし、ルイス君は刀を仕舞っては見て、抜いては見てを繰り返している。


 確かに詩織ちゃんは今日のドレス姿に赤い石のついたネックレスが似合っているし、ルイス君のものになった護り刀は白木の鞘と柄、そして中身は本格的な刀の造りでいい出来だ。


 俺とジェニーは早々に戦利品を自分の部屋へと持っていったし、奈津希さんは客間にディフューザーをセットして起動している。

 今日泊まるつもり満々だ。


 ソフィーちゃんも何回もストラップを使って魔法を試していて、結果キッチンのシンク内に氷柱が出来ている。

 風遊美さんのペンダントも似合っているし、香緒里ちゃんは腕時計を今まで使っていなかったのでちょうどいいだろう。


「さて、それではパーティそのものはお開きだ。食べ物は一皿にまとめて、あとは適当につまむなり何なりしよう」

 という事で片付けに入る。


 ◇◇◇


 片付けて風呂に入って一服した後、俺は再び自分の部屋でパソコンに向かう。

 テーブル上にはさっき貰ったばかりのマグカップに入った冷たい紅茶。

 よくあるマグカップのようにストンと下に落ちている形ではないから水滴も机の上に付きにくい。

 それでいて結構容量が大きいし便利だ。

 例の最強魔法杖の設計をしていると、扉がノックされる音が聞こえた。


「はいはい」

 扉を開けると風遊美さんだった。


「お邪魔してもいいですか」

「どうぞどうぞ」


 と言っても俺の部屋にはベッドと机しか無い。

 風遊美さんはベッドのマットに腰掛ける。


「そのカップ、早速使って頂けているようですね」

「容量が大きいし水滴も落ちにくいしいいですよ。形や色も綺麗ですしね」

「なら良かったです」


 風遊美さんはそう言って、香緒里ちゃんの作ったペンダントを手で持ち上げる。


「これもなかなか気に入りました。形も可愛いし何にでも合いそうだし。おそらく何か魔法効果もついているのでしょうけれど」

「製作者が言わないなら俺も言いませんが、確かに魔法効果はかかっていますよ」


 意識して鑑定魔法を使わなくても俺にはわかる。

 付加してある魔法は『幸運』。

 意思決定の際にほんの少しだけ働いて、本人の意思を望む結果の方へ導いていくというとんでもない代物だ。

 だから効能は、言わぬが花。


「何かここ1年、夢のようで。こんなに幸せでいいのかなって時々思います」

「いいんじゃないですか。俺も幼稚園から今まで通じて、ここが一番楽しいですし」


 何せ小学校は途中から孤立し、中学校でも孤高を気取っていたしな。

 もちろんそれなりの理由もあったのだが、特区ここなら俺も自然でいられる。


「それでも時々私、思うんです。目が覚めたら全部夢で、私も風遊美じゃなくてテオドーラのままで」


 テオドーラ?と聞きそうになって気づく。

 多分風遊美さんの昔の名前だろう。

 何度も逃げてきたって前に言っていたし、聞かない方がいいだろう。

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