第209話 朝の犠牲者

 今年は冬休みが早く来た。

 土曜日曜振替休日と、都合3日分程だけれども。

 例によってマンション内には学生会役員が泊まり込んでいる。


 本日月曜日の朝も、詩織ちゃんとルイス君と同じベッドで迎えてしまった。

 というか詩織ちゃんは部屋すぐ横だし空間移動使えるし泊まる必要無いだろ。

 ルイス君は本当は帰るつもりだったらしい。

 詩織ちゃんに捕まり強引に宿泊となったのだ。


 この気の毒さ、まるで昔の俺を見ているかのようだ。

 何時か何処かで報われて欲しい。

 俺もあまり報われていないけれど。


 今日は昼間はフリーで夜は18時からクリスマスパーティ。

 ドレスコードは『クリスマスパーティに相応しい服装』となっている。

 なお相応しくないと判断されると。

 強制的に奈津希さんとジェニーの用意した服に着替えさせられるとの事だ。


 あの2人の趣味だけに何に着替えさせられるかわかったものじゃない。

 なので一応俺はスーツを用意しておいた。

 これでいいんだよな、きっと。

 プレゼントは小さい箱に入れて包装紙もリボン掛けもしてある。


 さて、2人はまだ起きそうにないので、洗面したらちょっとまた別のものをCADで設計してみるかな。

 実はこのプレゼントを作った時、つい思ってしまったのだ。

 今の俺の技術とテクニックを全て使って魔法の杖を作ったらどの程度の性能が出るだろうと。


 魔石の他に水晶発振による増幅、魔法陣による増幅、魔力動線による増幅全てを使って、どこまで凶悪な杖を作れるか。


 俺が作った魔法道具は、どちらかと言うと使いやすさ重点で作っている。

 例外はこの前のアミュレットと今回のプレゼント位だ。

 これらは小さいので絶対出力がどうしても弱くなる分、増幅重視で作ってある。

 これを普通の杖に応用したらどうなるか。

 何なら同一属性の魔石を複数入れて共鳴させて瞬間出力を増幅させてもいい。

 そんな事を考えながら洗顔を終える。

 まだ誰も起き出してきていないリビングを横切り自分の部屋に戻る。


 パソコンを起動してCADを開く。

 今回はサイズにもこだわらない。

 ただ俺が今思いつく全ての技術を入れ込みたい。


 積層魔法陣を複数入れて共鳴させるとか、色々部分的に設計をしてみる。

 と、不意に俺の背後で何か妙な気配がした。


 見るとルイス君が石化しかけている。

 詩織ちゃんが寝ぼけて思い切りよく抱きついているのだ。

 石化したまま目だけが助けを求めている。


 やれやれ、しょうがないから助けてやるか。

 俺は布団をめくり、詩織ちゃんの両腕を引き離しにかかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る