第207話 学生会役員応募締切前日
俺が渡すプレゼントは何にしようか。
誰の手に渡っても使えるものがいい。
そして俺が他と差別化できるもの。
という事はやっぱり自作で、かつ俺でしか作れないものがいい。
そして俺は実のところ作ってみたい物があった。
ヒントは秋に作ったアミュレットだ。
今でもじわじわと売れていて、何気に結構な収入になっている。
あれを更に小さくして、いつでも携帯できる杖代わりの物を作ろうと思ったのだ。
普通の魔石を使うと予算オーバーするから、大魔法の時に使い捨てに使うようなクズ石を使う。
魔力銀も魔法陣を描く分しか使わない。
黒曜石の代わりにプレパラート用の安いガラス。
でもガラスを積み重ねた積層構造の魔法陣にすれば効果はそれなりにある筈。
形と大きさは紙粘土で色々試作してみた結果。
ちょっと大きめの柿の種のような感じにした。
せんべいではなく植物の種の方だ。
手を握って親指と人差し指の間で挟んで持ってちょうどいい位。
設計図をCADで描く。
長さ2センチ幅1センチ厚み8ミリに、積層魔法陣と魔石のかけらと魔力導線を押し込めたぎりぎりの設計。
だが俺は微細工作は得意中の得意だ。
何せ魔法で加工が出来る。
トネリコの棒材のかけらをやすりと魔法で加工して外形を作り、魔法で真っ二つに割って中に筋を彫って魔法増幅関連を埋め込む。
ある程度の重さにするためステンレス棒材を縦に埋め込み、壊れやすそうなガラスや魔法動線は樹脂でコーティングして、そして割ったトネリコをもとのように貼り合わせる。
丁寧にニスがけをしてストラップを付けるまで、2週間ほどかかってしまった。
無論他の作業もしていたし、バネ作業の手伝いもしたりしたのだが。
魔法工学科の他2人も、順調に何か作っているようだ。
香緒里ちゃんは何を作っているのかわからないが何か小さい物らしい。
逆に何を作っているのかバレバレなのが詩織ちゃんだ。
刀で味をしめたのか、今度は短刀らしい。
確かに材料費は5000円程度かもしれないけれど、製品としての価値はとてもそんな物じゃないだろうと思うのだが。
他の皆さんもネットでカタログ見たり何やら部屋に篭って作業していたり。
ただプレゼントの方はいいのだが、今年も学生会役員募集、全然反応がない。
既に応募期間延長のポスターも貼付しているのだが。
というか、明日までに決まらないと教授会推薦になってしまうのだが。
まあ毎年そうなるのだが、今年は人身御供として1人は欲しい。
俺は会長職などやりたくないのだ。
何せ会長になると学内集会での挨拶とか魔法特区懇談会への出席とか。
色々と面倒が増える。
そういうのは俺よりもっとルックスのいい万人受けする人間にやってほしい。
俺は今の監査の仕事で十分だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます