第205話 日本の常識、君の非常識

「日本人の宗教観は世界でも類を見ない程いい加減でな。

 何でも取り入れて勝手に改造してお祭りにしてしまうんだ。

 バレンタインはチョコレートの日、ハロウィンは仮装して馬鹿騒ぎをする日だ。

 クリスマスもそれと同様。一応キリストの生誕日だという知識はあるけれど実質ただのお祭りの日だ。そうだよなジェニー」

「はいれす。日本を知っている人の間では常識なのれす」


「そこで何故ジェニーに聞くんだ」

 ルイス君のもっともな質問。


「修や香緒里に聞いても当たり前過ぎてその異常さに気づかないからな。ジェニーは日本に来る前から日本文化について詳しいし」

「他にもクリスマス撲滅デモとかサンタ狩りとか楽しい行事が色々あるのれす。この機会に日本の文化について色々知ってほしいれす」


 それは日本の文化なのだろうか。

 だとしても大分偏った文化だと思うぞ。


「そういう訳でプレゼント交換用のプレゼントが必要な訳だ。自作してもいいし注文してもいい。ただし予算は5000円以内に限定しよう。自作の場合でも材料費は5000円まで。特に魔法工学科3人は自重しろよ」


 香緒里ちゃんも詩織ちゃんもかなり稼いでいるので、金銭感覚がとってもアバウトになっている。

 材料費なんて全く考慮しないで高い素材を平気で発注したりしているし。

 まあ俺も人の事を言えないが。


「という訳で24日火曜日18時にパーティ開始。プレゼント選定までにそんなに猶予は無い。船便を使うなら締切はかなり早くなるしな。

 なお当日の料理は僕に任せてくれ。正しい日本風パーティ料理を見せてやる。

 さあ、これで色々暇を潰せないかな」


 確かに。

 注文するにしても自作するにしても3週間というのはなかなか微妙な期間だ。

 早々に色々決めなければ間に合わなくなる。


「香緒里ちゃん、作業中止。会計は来年に回そう」

 暇だから作業していたのであって、予算案自体は来年作っても十分間に合う。


「そうですね。私も工房に行きたくなりました」

「私も行くですよ」


「あ、詩織は少し待ってくれ。これから日本式クリスマスを知らない人対象に、ジェニー先生と僕で講習会をするから」


 あ、何か下らなくて面白そう。


「俺達も聞かせてもらっていいですか」

「勿論。なあジェニー」

「はいれす」


 どんな内容でやる気だろう。

 それにしても急な話なのに、ジェニーはやる気満々だ。


 ルイス君が手回し良くホワイトボードをセットする。

 ソフィーちゃんはカメラをセットした。


 そして、誤解と偏見に満ちた日本式クリスマスの解説が始まる……

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