第16章 優雅で感傷的な日本行事 ~冬の章・前篇~

第204話 それは暇潰しから始まった

 中間試験が終わると12月になる。

 次期学生会の幹部を決めなければならない月だ。

 取り敢えず『学生会会長・副会長・役員募集』のポスターは学内掲示板7箇所に貼り出した。


 貼り出して1週間、反応は例年通り全く無い。

 本音を言うと会長と副会長の2名は応募していただけると有り難いのだが。

 俺は表に出る事は苦手なので。


 午後3時の学生会室。

 俺と香緒里ちゃんは来年度の予算案を作成中。

 ジェニーとソフィーちゃんは学生会のWebページを更新中。


 他は授業の予習復習をしている者もいれば、ネットサーフィンで時間を潰している者もいて、つまりは。


「暇だなあ」

 と奈津季さん。


「何か面白い事あるですか?」

 詩織ちゃんが真っ先に食いついた。


「今暇な4人ですと、グラウンド全体を使った鬼ごっことかソフトチャンバラでしょうか」

「やめてくれ、それは僕が絶対不利だ」

 風遊美さんと詩織ちゃんは空間操作魔法を使えるし、ルイス君は空を飛べる。


「なら奈津季は何か、案があるのですか」


「その前に質問。冬休みまであと実質3週間だろ。今年は皆はどんな予定なんだ」

 奈津希さんはそう言って立ち上がり、ロッカーの側面にかけてあったカレンダーを外して持ってくる。


「私は冬は特に予定は無いですね」

「俺は31日昼の便で帰省して4日に戻ってくる予定」

「私も修兄と同じです」

「冬休みの予定は無いれすよ」

「私は30日に東京に出かけて6日に帰る予定なのです」

「僕は29日から6日まで国に帰る」

「私は30日から6日までです」


 奈津希さんはだだっとカレンダーに○×印と矢印を入れる。


「つまり移動前日は準備に使うとしても、21日の夜から27日までは皆空いている訳だ。なら取り敢えず、どこかで日本風クリスマスパーティやろうぜ」


「日本風のクリスマス、パーティですか」

「私はわかるれすよ」


 お、ジェニーが食いついた。


「ケーキを食べてチキンを食べて、プレゼントを交換するお祭りなのれす」

「正解」

 にーっと奈津希さんは笑う。


「日本のクリスマスはキリスト教関係ない。単にうまい物を食べてプレゼント交換をするお祭りだ。本当はその後恋人とホテルでしっぽりウッシッシという恒例行事というか様式美もあるんだがそれは省略」


「それの何処がクリスマスなのですか?」

 風遊美さんとルイス君が納得いかない感じの表情をしている。

 まあ当然だろう。

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