第197話 俺は馬鹿は嫌いだ(1)
凄く悔しそうなルイス君がいる。
滅多斬り大会本戦のトーナメント2回戦で、運悪く鈴懸台先輩と当たってしまったらしい。
結果は惜敗。
結構接戦だったらしいのだが。
「まあ翠先輩は剣技なら5年筆頭だからな。そう簡単には落とせなくて当然だ。まあ甘いものでも食って元気出せ」
ちなみに甘いものとは毎度おなじみ創造制作研のどら焼きだ。
毎日何かしら買って売上に貢献する事にしている。
そんな事をしなくても充分に繁盛しているのだが。
「もし奈津季先輩が翠先輩と戦うならどうしますか」
「機動戦になると思う。お互い位置の取り合いをして、最終的に有利な距離を取ったほうが勝ち。近接戦では僕もちょっと勝ち目は薄いかな」
「先輩はそう言うけれど、僕は近接線も割と自信があったんです」
「向こうは高機動近接格闘戦専門だろ、ルイスは必要なら空中から風魔法で遠隔攻撃も出来るじゃないか。まあ翠さんは専科決まっているからあと2年は
それより、そろそろ例の日本刀比較会始まるんじゃないか」
時計を見る。
午後1時を少しまわったあたり。
例の行事は午後1時からだからちょうど始まったところだろう。
「見るなら行ってきていいですよ。俺は興味ないですから」
「そう言っているけど、刀匠の爺さん焚き付けた張本人の1人だろ」
「馬鹿を見るのも聞くのも嫌いなんです。イライラして消毒したくなるんです」
この場合の消毒とは、北斗の拳の超有名な名無し雑魚キャラが火炎放射器をぶん回して言っている方の意味だ。
ナウシカならばクシャナ様曰く「焼き払え!」っていう奴だな。
と、無線が入った。
「学生会長津田監査宛て。教授会から要請です。学内C2会場へ至急お願いします。繰り返します」
C2会場とは例の日本刀比較会の会場だ。
正直ああいう場所は嫌いだ。
俺は人前に出る事そのものが好きではない。
それに、特に今回は行きたくない。
俺の嫌いな俺が出てしまいそうで。
既に最近この件ではちらちら表に出てしまっているが。
「奈津季さん、無線で『やだよ』とふいておいえ下さい」
俺はそう言って立ち上がる。
「本当にそう言っていいのか」
「残念ですが行きますよ。嫌ですけどね。香緒里ちゃんや詩織ちゃんが被害にあったら可哀想ですからね」
「学生会宮崎台からC2会場へ。監査殿がそっちに向かった。危険触れるなどうぞ」
奈津希さんには完全に俺が不機嫌モードに突入している事がばれている。
正直このモードの俺は自分自身好きじゃない。
でも。
正直歩くのもたるい。
学生会室から一番近い出口から出て。
すぐそこの工房に停めてある例の簡易潜水艇に乗り込む。
乱暴に空中に浮上し校舎挟んで反対側のC2会場へふっ飛ばした。
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