第186話 小話その3の2 俺は何を作りたい

 食事はそれなりに豪華だった。

 刺盛りが大皿2枚分。

 煮付けが2皿4匹分。

 それに海藻サラダとご飯。


 米と調味料以外は攻撃魔法科2人が現地調達したものだ。

 いつもの巨大魚と違い小型で白身のさっぱりした魚メイン。

 でもなかなか美味しい。

 やっぱり奈津希さんがいると色々便利だよな。

 そんな事を思いながら満腹中枢が刺激されるまで食べまくる。


 その結果、午後の活動は皆さんトドの昼寝状態。

 ただ島の反対側に移動したので日陰が多く、海風の影響もあってなかなか快適。

 例の奴隷作業さえなければだが。


「浜も変わったし、どんどん採るですよ」

 と詩織ちゃんは鼻息が荒い。

 そして海水と砂を吸い込んだ砂鉄採集機はとっても重い。


 これを何日か繰り返せば俺も筋肉もりもりになれるかもしれない。

 まあ明日は筋肉痛が確定だな。


「しかしそうやって刀用の鉄を採っているとは意外だったな。てっきり材料の鉄はメーカーから買っているのかと思った」

 寝転んだ状態のまま奈津希さんが言う。


「普通は買っています。これは単なる詩織ちゃんの趣味です」

「どうせなら成分調整まで含めて完全なものを作りたいのです」

 いや別にそれは買ってきても出来るし。

 それにその方が簡単だよな。


「4年の大井町の刀を作ったのも詩織かい」

「あれは私の日本刀の第2号、三日月宗近です。魔法対策もしていないし売るつもりは無かったのですが、ついつい押し切られてしまったのです」

「本人はいたく気に入っていたな。接近戦で圧倒的に使いやすいって。奴は元々身体強化と高速移動重点の魔法剣士だから、刀に魔法を使うことも無いし」


 成程、そういう需要もある訳か。


 俺が開発した魔法杖や魔法剣は使用側の意見等を聞いた上で、理論と実用性から作った物だ。

 市場調査という程でもないが使う側の意見から考えたもので、今でもそれなりに需要も多いしちょこちょこ稼がせても貰っている。

 ただ詩織ちゃんのパワードスーツや日本刀のように、使用者の事を考えずに完全に自分の作りたい物を納得行く形で造るという形でも、ちゃんと需要は出来るらしい。

 無論詩織ちゃんにそれなりの選球眼というかセンスがあるからなんだろうけれど。


 俺でも出来るかなと考えてふと気づく。

 そう言えば最近俺は、詩織ちゃんのように作りたいものを作りたいように作る、って事をやっていない。

 それこそが俺の物作りの原点だった筈なのに。

 一年の頃はあの第1工作室で好き勝手に色々な物を作っていた筈なのに。


 よく考えたら最近は課題とか頼まれ物以外は作っていない。

 今作りたい物と言っても急には思いつかない。

 これではセンスが鈍るのも当然だよな。

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