第183話 小話その2の2 人の恋バナ盗み聞き(対象は俺)
夜中、ふと目が覚めた。
今日は露天風呂を途中で切り上げ、魔力上げ特訓をしてベッドに倒れたんだった。
俺のベッドには他に誰もいない。
という事は一年生3人は寮や自宅に帰ったらしい。
4年生2人はわからないが。
と、リビングの方で声がするのに俺は気づいた。
俺の部屋の扉が少し開いていて、そこからリビングでの会話が漏れている。
「でも、どうしてもわからない。私には」
「何が」
風遊美さんの声と、奈津希さんの声。
「あなたです。奈津希」
「僕の何処が」
風遊美さんの重めの口調と、対象的に軽い奈津希さんの口調。
「修君って、奈津希の好きなタイプですよね。糞真面目で、笑っちゃう位素直で、不器用だけれど正直で真っ直ぐで」
「そうだね。だから何度も僕に乗り換えないかアピールしてる」
「やっぱり、今乗り換えるって表現を使いましたね」
ちょっと間があく。
「今日の昼にやっと気づいたんです。奈津希は修君に好きだとちゃんとアピールした事は無いなって。たまに冗談めかして言うだけだって。
今までは直接そう言う事は言えない照れ屋なのかなとも思っていました。
でも今は違います。
奈津希、あなたは修君にもう誰か心に決めた人がいると思っていますね」
「何でそう思うんだい」
「今日言いましたね。『確たる相手がいる』とか『本人が意識していないだけ』とか『乗り換えないか』って。本心のふりをした冗談のふりをした本当の本心。あの時だけ奈津希の本心が見えた気がしたんです」
またちょっと間があいた。
「厳しいなあ、風遊美は」
「という事は認めるのですね」
「あくまで僕が思っているだけ、だけどな」
軽い口調のまま奈津希さんは続ける。
「きっと修も相手も本当は知っているんだ。でもそれに気づいていないだけ。
知っているのと気づいているのとは違うんだ。理解して確認して、受け入れる作業が必要なんだ」
「奈津希にしては随分ナイーブな意見です」
「僕はいつでもナイーブさ。知らなかったかい」
軽く鼻息。
「知っています。
「風遊美にしては棘のある言い方だね」
「なら、人一倍這いつくばって人一倍色々見て調べて考えて悩んでいる癖に、あたかも高みから全てを見下ろして全てわかっているような顔をする、仮面の裏は決して見せない
冬の襲撃のちょっと前図書館で医学書を読み込んでいた事も、春の事件前に修君の部屋にどんな工作材料があるか調べていた事も偶然ですか。他にも色々あります」
何かため息のような音が聞こえた。
「わーったわかった奈津希ちゃんの負け。認めるよ」
「じゃあ何故修君の相手に気づいたのか、教えてくれます」
「簡単なことさ。でも言わない」
ちょっと間があいた。
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