第182話 小話その2の1 恋愛テスト

 翌日にはもう学生会全員がマンションに集合していた。

 今やっているのは俺への心理テストだそうだ。

 質問に答えるだけではない。

 俺の両腕にバンドでセンサーが付けられていて、色々反応を見ているらしい。


 ちなみにこれらを仕掛けて質問をしているのはソフィーちゃん。

 心理医療夏休みの課題の一環だというが絶対に嘘だ。

 これは確かに補助魔法科の資材だが医療じゃ無くて教育心理の資材だ。

 何せ俺も開発に関わっているからな、その辺は知っているぞ。


「第15問 登山中、急な風が来て2人が飛ばされてしまいました。

 位置的に助けられるのは修さんだけです。

 危険な状態なのはジェニーさんと香緒里さん。修さんならどちらを助けますか」

「近い方」


「第16問……」


 結構質問が多い。

 俺は特に考えること無く答えているが、どうも質問には色々な意図があるらしい。

 補助魔法科の風遊美さんとジェニーが、俺が答える度に色々表情を変えながら様子を伺っている。


 計50問を終了したところで、ソフィーちゃんはうーんと唸る。


「どうだったのれすか」


「駄目です」

 ソフィーちゃんは首を横に振る。


「測定値のフラクチュエーションがトーリトーです。これは恋愛感情を誰にも持っていない、または既に確たる相手がいて迷いがない場合の値です」


 風遊美さんとジェニーがソフィーちゃんのパソコンを覗き込む。


「本当だわ。どの値もぶれが少なすぎる」

「おかしいれす。装置の状態が悪いれすかね」


 ソフィーちゃんは首を横に振る。


「参考までにさっき取ったルイスのデータです。本人のプライバシーのために名前とのリレーションはデリートしたですが」


 パソコンの画面が切り替わる。


「おーこれは一目瞭然れす。対象Bに憧れと恋心、対象Eも気になる存在れすか」

「確かにこれが普通の値ですね。装置は故障していないようです」


 ルイス君は部屋の隅で真っ赤になってそっぽを向いている。

 可哀想に。


「取り敢えずこのデータから言える事は、修君が今はフリーだという事ですね」


「どうかな。確たる相手がいるのかもしれないよ。本人が意識していないだけで」

 にやりと笑って奈津希さんが言う。


「どうだい。今から僕に乗り換えないか。只今絶賛キャンペーン中。美味しい料理とアツーい夜を約束するぜ」

「謹んでご辞退申し上げます」

「うーん、いけずー」

 奈津希さんはいつもの調子だ。


 しかし気が付かずやってしまったが、なかなか危険な心理テストだったようだ。

 何とか誤魔化せる値が出たようだが、これは偶然にすぎない。

 可哀想なルイス君のようになる可能性のほうが高かったのだ。


 でも、俺はふと考える。

 俺が好きなのは誰だろう。


 由香里姉や香緒里ちゃんは勿論好きだ。

 風遊美さんも奈津希さんもジェニーも。

 皆色々尊敬できるし綺麗だし可愛いし魅力的だ。


 でも恋愛感情かと言えば、きっとどれもそうではない。

 ○○としてとか○○だからという理由付けが付く。

 別に性欲が無い方だとは思わない。

 無かったら露天風呂で苦労しない。

 パソコンにも隠しフォルダに見せられない動画や画像データがある。


 でも、恋愛、恋とか愛だとか。

 それは今の俺にはわからない。

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