第180話 小話その1終話 もうすぐ夏休み

 うちのマンションの玄関近くに新たな魔法道具が増えた。

 その名もプリン専用冷凍冷蔵庫。

 3万円分位買った冷凍プリン各種ウン百個がぎっちり詰まっている。

 もちろん詩織ちゃんの仕業だ。


 常に何個か解凍してあって、時々詩織ちゃんと隣のむさい親父がこそこそと食べに来ている。

 隣の奥様に報告するかどうかは、現在この部屋の住民で協議中。

 ただ袖の下にプリンを貰っている人間が何人もいる。

 正義が勝つ可能性は極めて低い。


 香緒里ちゃんは無事課題を提出した。

 あの風呂場の会話で何か掴んだと言うか、吹っ切れたらしい。


「よく考えれば今回は片腕だけ。難しい操作は残った腕で憶えた方がまだ楽ですよね。とするとつかむ機能と支える機能。それが充分なら問題ないと判断しました」

 とは提出後の香緒里ちゃんの話。


 実際、これはかなり良い出来だったらしい。

 プリンを食べに来た隣の親父兼担当教官が褒めていた。


「あれは実用的だし売れそうだな。シンプルにして良く吟味された理想的な作品だ。お前と違って、必要な事とそうでない事がよくわかっている」


 俺、すねても良いだろうか。

 まあそれはともかく。


 そろそろ夏休みが近づいている。

 既に皆様、色々予定は立てているようだ。


 風遊美さんとジェニーはソフィーの実家へ遊びに行くそうだ。

 ルイス君も実家に帰るらしい。

 詩織ちゃん含む田奈家は東京に連泊して服だの色々買い出しをするそうだ。

 先生と詩織ちゃんが機械類を買いすぎて奥様に怒られなければいいが。

 薊野姉妹と俺も一応実家に帰る予定。


 そして実家が島内でどこにも行かない人が1名。

「さっさと帰ってこいよ。おみやげは大いに期待しているからな。船便別送大歓迎」

 まあお盆過ぎにはほぼ皆帰ってくるのだが。


 既にその後の予定もある程度作られている。

 無人島海水浴とか魚釣り大会第2弾とか。

 この辺の海は普通にサメが泳いでいるから基本的に遊泳禁止。

 でもレーダー付きと攻撃魔法持ちがいるので全然心配はしていない。

 むしろ帰ってきた後の予定が多過ぎるのが心配だ。

 俺の体力、持つだろうか。


 あと俺としては、出来れば魔力をもう少し上げたい。

 奈津希さんによれば、極限まで魔法を使う事を繰り返せばある程度上がるとの事。

 確かに重い鍋を作った後やこの前の襲撃の後、少し魔力が上がった気がした。

 普段は無理だから夏休みでも使って鍛えようかな。


 いずれにせよ、夏休みはもうすぐだ。

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