第175話 拠点防衛戦

 轟音がした。

 舵を壊した2隻は岩礁に乗り上げたようだ。

 こちらへ向かってくるのは残り3隻。


 エンジンのオルタネーターをいじってやる。

 響いていたエンジン音が静まり速度が一気に落ちる。

 その隙に感知した銃器全部のバレル内に異物を固定。

 これで戦闘力は大幅に落ちる筈だ。


 何人かが海中装備らしきものを着装している様子。

 面倒なので動きを感知出来た人間はその場で麻痺させる。


 流石に15人程気絶させた時点で大分疲れを感じた。

 だが、まだまだだ。


 奥のやや大型の船から飛行物体が2機、空中へ。

 魔法動力の飛行機械を装備した兵だ。

 とすると、ひょっとして。


 俺は後ろ側で稼働している機械を探す。

 案の定崖の上側に同様の飛行兵。

 だが何かでマスクされていて大脳部分が見えない。

 取り敢えず銃器と飛行制御用らしいチップは壊しておく。


 前方の飛行兵も倒したいが多分魔力がやばい。

 由香里姉達はもう気づいているだろうか。

 既に向かっている最中だろうか。


「そっちは」

「もう少し」


「わかった」

 香緒里ちゃんがそう言うなら、それまでは俺一人でなんとかしないと。

 俺の魔力はおそらく残り少ない。

 なのでこっちへ向かってくる人と機械を中心に対処することにする。


 と、不意に背後の崖上の兵が動いた。

 こっちではなく、島の反対側の方へ。


 替わりに前方から小型船3隻が近づいてくるのがわかる。

 だがまだ魔力を使い切るわけにはいかない。

 俺は付近を警戒しつつ敵の動向を探る。

 新たな小型船は動かなくなった小型船の付近でエンジン音を落とした。

 先程前方を飛んでいた飛行兵が付近の船舶に着船する。


 新たな音が近づいてくるのが聞こえた。

 聟島方向から飛行機のものと思われるちょっと低い音。

 敵かと一瞬思ったが違った。

 見慣れた自衛隊のP-3Cだ。


 とすると。

 予想通り聟島方向の崖上ぎりぎりの空中に見慣れた漁船が現れた。

 空中ドリフトとしか言えないような無茶な機動で急旋回。

 俺達のところへ降りてくる。


「香緒里!修!大丈夫!」

 由香里姉の声。


 それが聞こえた途端、ふっと力が抜ける。

 安心した瞬間、俺は気づいてしまったのだ。

 実は俺、なけなしの魔力をほぼ使い果たしてしまっている事を。

 そしてそのまま、俺の意識は薄れていく……

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