第169話 釣果過大

 釣果は1年組で総計40キロ、2年組が35キロ、4年組が32キロ。

 接戦だった。

 魚種もギンガメアジ類からカンパチ類、イソマグロ等色々揃っている。


 釣れて上機嫌なのはいいが、問題は後始末だ

 計100キロ超、14匹をどうやって消費するか。


「今日は学生会の工房に行こう。

 着いたら魔法工学科2人と詩織は簡易冷蔵庫等の作製。

 ジェニーとソフィーは夕食会をネットで告知しまくってくれ。

 日時は全学年が空いている次の火曜日午後4時から。場所は学生会工房前。自由参加で立食形式。醤油とご飯は出来れば自分で用意してくれと言う感じで。メニューは着いたら考える。

 風遊美とルイスは魚の下ごしらえを手伝ってくれ。そんな感じで」


 さては奈津希さん。

 釣れすぎた場合の事も最初から考えていたな。

 というか当初から釣れすぎる予定だったんじゃないかな。

 そう思いつつ、俺は船を浮かせ、学校を目指す。


 着くと同時に作業が始まった。

「詩織ちゃんごめん、買い出し頼む。物は塩2キロ、本みりん800ミリリットル以上のボトル1本、昆布茶1缶。お代は後で払う」


「修悪い。ロウニンアジの開きを漬け込める位の入れ物作りを先にやってくれ。包丁は香緒里ちゃんに頼んだほうがいいんだっけか。いわゆる出刃包丁刃渡り170ミリ2本を頼む。マンションにあるのはいまいち使いづらいんだ」


 全部魔法で作っていたら僕の魔力が持たない。

「漬け込む容器はコンクリ用のトロ舟でいいですか。無論中は洗浄します」


「保健衛生上問題なければ何でもかまわない」

 奈津希さんの許可を貰った。


 奈津希さんは指示しながら風遊美さんやルイス君と一緒に巨大作業台を外の水道脇に移動させている。

 どうやらここで魚作業をするつもりらしい。


「修兄、包丁用の素材はここにあるの使っていいですか」

 香緒里ちゃんが俺に尋ねる。


「ストックにあるのはどれを使っても良い。任せた」

 包丁等の刃物は俺より香緒里ちゃんの方が作るのは上手だ。

 冗談と趣味で日本刀を作ったりもしていたし。

 素材も前に追加で買った青紙の在庫があったはずだ。


 俺はステンレス製のトロ舟を引っ張り出す。

 水道と魔法で表面を新品同様にしてから奈津希さんの所に持っていく。


「このトロ舟でいいですか」


「上等上等」

 奈津希さんはトロ舟の横をトントン叩いてそう返事をした。

 でも。


「これは一体何に使うんですか」


「干物を作る時、魚の余分な水分を抜いて味をつけるために漬け汁につけるんだ。そのためのさ。普通はボールやバケツでやるんだが、魚の大きさがあれだからな」


 成程な。

 俺は次に簡易冷蔵庫の作製に入る。

 今回は木材を使用するつもりだ。

 化学物質が怖いので合板ではない板材と角材をストックから取り出す。

 大きさは棚の底面積が今までで最大の魚を入れても困らない大きさ。

 全体は今回の獲物全部を調理しても大丈夫な程度で行くか。


 冷蔵庫というよりは物置とか押入れという感じのサイズ感だ。

 でも香緒里ちゃんの魔法で低温属性を付加する。

 だから電気代等は考えなくていい。

 なので気楽に小屋でもつくるような感じで木材を切って組みたてる。


 その間にも奈津希さんの作業は続く。

 俺が洗ったトロ舟に水を入れ、塩を袋からどばっと入れる。


「風遊美、検定魔法お願い。あとどれ位水を入れれば8パーセントの食塩水になる?」

「もう少し、そう、そろそろですね」


 次にみりんをどぼどぼとコップ一杯くらい入れ、昆布茶の粉をぱらぱらまく。

「これで漬け汁は完成。次は包丁が出来るまで待ちかな」


「包丁は15分待って下さい。ある程度自然に冷えるのを待ってから研がないと、切れ味が落ちます」


 包丁は音からして叩いて延ばしている段階。

 香緒里ちゃんの近くで詩織ちゃんが興味深げに観察している。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る