第168話 魚釣り大会(俺は除外)

 土曜日の早朝、俺達は海に出ていた。

 

 例の空飛ぶ漁船上に出ている釣り竿は3本。

 4年生、2年生、1年生による学生会内学年対抗アジ釣り大会だそうだ。


 体長40センチ以上の美味しい魚をカウントし、重さの総合計で順位を決定。

 賞品等は特になし。

 また俺は船の操縦専任で参加資格が無しとのこと。


 何でそんな事になったかは簡単だ。

 詩織ちゃんの馬鹿馬鹿しく大きいオーブンを見た奈津希さんが、

「どうせならこれでアジの開きや丸焼きをいくつか作って学校内有志でパーティしようぜ」

等とのたまったからである。


 いつの間にか竿も3本に増え、仕掛け等も追加購入されていた。

 用意がいいというか、要は奈津希さんが釣りをしたかっただけのような。


 午前8時現在、開始30分が経過した。

 カウントされた釣果はまだ無い。

 体長35センチのカイワリが今のところの最大サイズ。

 あれをリリースした時の風遊美さんが凄く悔しそうな顔をしていたのは内緒だ。


「ジェニー、場所を変えたほうが良さそうか」

「いない訳ではないのれすが。このままの方向と速度であと5メートル落としてみてくらさい」


 ジェニーの指示で3人共少し糸を出す。

 と、いきなり一番左、一年生組の竿が曲がった。


「ヒット、体長50ちょいです」

 香緒里ちゃんと奈津希さんが残念そうにリールを巻いて竿を上げる。


 その横ではルイス君が竿とリールを手に戦いを始めていた。

 結構ガンガン下の方へ向かって引く。


 横方向へファイトしすぎると船のバランスが悪くなる。

 だから真後ろに竿が向かうよう、俺は船を微調整。

 魚が凄く暴れているようだ。

 結構右に左に竿が持って行かれている。


 だがルイス君はしっかりバランスを取っている。

 むしろファイトを楽しんでさえいるようだ。

 流石攻撃魔法科。


「いいなあ、楽しそうで。くすぐってやろうかな」

「頼むから止めて下さい」

 ルイス君は奈津希さんとそんなやりとりをしながら、着実に寄せている。


 5分位かけ、ルイス君が汗びっしょりになって寄せたところを奈津希さんがタモ網一発で掬い上げた。

 見ると黒いロウニンアジ、といった感じの魚だ。

 見かけはちょっと不気味でさえある。


「体長54センチ、重さ7キロ。食べられるかの判定は」


「シガテラ毒は大丈夫です」

「ブラックジャックだね。ギンガメアジの一種だ。これでいざという時の開き用は確保できたな」

 奈津希さんはそう言って氷温保存の魔法をかけて船庫へ。


 1年組はソフィーちゃんに釣り竿が渡され、再び釣りが再開される。

 今度はあっさりとジェニーの竿が曲がった。

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