第167話 徒然なるままに

 中間テストも無事に終わり、補正予算折衝も何とか終わった6月の平凡な平日。


 補正予算折衝は大方の研究会や部活にとって不本意に終わったと思う。

 実際に結構不満が多かったのだが、補正予算にも基準と予算枠があるのだ。

 元々補正予算は新人が予想より多かったり、新たな実績なり。

 そういう事態の際に執行するものだ。

 つまり殆どの研究会等は新人の大幅獲得に失敗し実績もそれ程無いという事だ。


 例外的に創造製作研究会は3人の新人獲得に成功、更に買い上げ物品の制作補助の実績も併せ10万円強の補正予算獲得に成功した。

 別に俺が古巣を贔屓した訳ではない。

 彼らはそれ相応の努力をしたという事だ。


 さて色々な面倒事が終わったので、俺はのんびり課題の制作をしている。

 今回の課題は製作といっても物ではなくプログラムだ。

 円周率を自分で考えたアルゴリズムで作成し求めよという問題である。


 ちなみに評点基準は既に公表されていて、

  ① 円周率を独自アルゴリズムで30桁以上正確な値を求められた場合 A評価

  ② 同様に16桁以上正確な値を求められた場合 B評価

  ③ 正確な値が15桁以下、若しくはプログラムミスで動作しないがアルゴリズムは間違っていない場合 C評価

  ④ 但しアルゴリズムを自分で考えていないと判断された場合 D評価

  なお他人またはネット等のアルゴリズムをコピーした可能性があると判断した場合は、確認のため教官室に呼び出しの上面接及び小テストを行う。

  ⑤ 使用可能な変数型は、標準ライブラリにあるもののみとする。

    他人が作成した変数型を使用した場合はD評価とする。

    またプログラムの実行評価はスタンドアロンの端末で行う。

  ⑥ D評価の者は再課題を別途作成し提出することとなる。この場合の最高評価はBとする。

となっている。


 この課題のいやらしいとことは

  ○ アルゴリズムを独自に考えてプログラムすること

  ○ A評価を受けるためにはプログラム言語上の仕様の長長整数型よりも桁数が多い計算を行うルーチンを自作する必要があること

だ。


 ちなみに何故プログラムの実行評価をスタンドアロン端末で行うという規定なのか。

 これはネットを検索して正確な円周率を探してくるというお馬鹿なプログラムを作って提出した先輩がいたためである。

 なお当時の評点基準には抵触しなかったのでA評価を勝ち取ったらしい。


 さて、今俺がいるのはいつもの学生会工房。

 今工房にいるのは俺と香緒里ちゃんと詩織ちゃん。


 風遊美さんとジェニーとソフィーちゃんは学生会室でWebページ更新をしていて、奈津希さんとルイス君は外でトレーニング。

 香緒里ちゃんは例によってバネ作業に追われていて、詩織ちゃんはまた怪しげな物を作っている。


「今回作っているのは何なんだい」


 詩織ちゃん、にやりと嗤う。

「単なるオーブンなのですよ。この前のお魚を丸ごと中までこんがり焼けるオーブンがあったら楽しいかなと思ったのです」


「そんなの食べている途中で飽きるし腐る前に食べきれないだろ」


「ついでなので低温乾燥機能とスモーク機能も追加するのです。ロウニンアジの丸ごとアジの開きとかそのスモークとかを見てみたいです」


 確かに一度はやってはみたいが、多分やったら後悔するパターンだろ、それ。

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