第161話 今日もご飯が美味しいな
「色々な空間の曲がったところをうまく繋げて、海の中から露天風呂まで仮想のパイプを作るです。その時、中の物体が思った方向に動くよう、重力を利用して加速する部分を最初の方に作るのがポイントなのです。
あとはパイプの海側の出口に、私が作れる程度の空間の歪みを置いておくのです。小魚が通ると歪みで逃げられなくなって、パイプの前で右往左往してくれるです。
小魚に誘われて大型で美味しそうな魚が来たら、タイミングを見てパイプの入口を開いて中へ落とし込むです。でも1箇所だと魚が捕まらないのでさっきは15箇所作って待っていたです」
詩織ちゃんが何か説明しているのが聞こえる。
目を醒ますと既に夕食の準備がほぼ出来ていた。
というか、俺が目を醒ますのを待っていたと言う感じだ。
「すみません。遅くなって」
「いや、ちょうどかな。これがいい感じに完成した」
奈津希さんが巨大な塊が乗った皿を持ってくる。
なんと、巨大カンパチの頭をまるごと煮たものだ。
「一回やってみたくてな。甘辛い味付けて作ってみた」
他にも刺身各部位や胡麻和え、海鮮サラダと照り焼きにあら汁が並んでいる。
相変わらず凄く美味そうだ。
いただきますの声とともにまずは刺身が消えていく。
新鮮な分歯ごたえがあって、脂も乗っていて凄く美味しい。
次はまだ誰も行っていないかぶと煮に挑戦。
まずは下の頬肉の部分を取ってご飯に載せる。
凄く美味い。
飯が進む。
俺がかぶと煮を美味そうに食べているのを見て。
四方から箸が伸びて、かぶと煮がどんどん解体されていく。
俺はその隙に今度は胡麻和えをご飯にかけて。
うーんたまらん。
「奈津希さんはこういうレシピ、どうやって憶えたんですか」
「半分以上はネットさ。美味しそうな料理を見たらレシピを調べて、作れるように憶えておくんだ。日本の煮物なら味付けは大体共通だし、酢の物や和物も基本の味というのはある。それを覚えていればある程度応用は効くしさ」
何気に細かい努力の賜物のような。
と思ってふと気づく。
そう言えば奈津希さんは攻撃魔法科だけど、魔力は決して大きくない。
本来、攻撃魔法科こそ魔力が一番求められる学科だ。
魔力が大きければその分一撃の威力は増す。
単位時間あたりに使える魔法の総力も有利だ。
でも奈津希さんの魔力はジェニーもBと表現したように、決して高い方ではない。
でも攻撃魔法科4年の筆頭。
使える魔法の威力も最強クラス。
学園最強級の攻撃魔法を複数操る弱点属性無し最強のオールラウンダー。
魔力の平凡さとかけ離れた評価。
「おい修どうした。箸が進んでいないけれど、まだ魔力不足か」
奈津希さんの声。
考えている間、箸が止まっていたようだ。
俺は取り合えず、美味い料理を食べる事を優先することにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます