第158話 汎用性と独創性
「うーん、私も勉強しなきゃいけないですね」
「でも薊野のスクーターは一番実用的だぞ。使っている魔法が特殊だから量産がきかないけどな」
確かにスクーターは一番使っている感じがする。
他と違って明らかに床が擦れている感じだ。
「成程、勉強になるです。汎用性ですか」
「旗台のはあれでいいと思うぞ。実用無視のロマン仕様だろう。ああいう方向性も必要だ。
実際、結構売れているぞ。パーツの加工は困難だが使っている魔法部品そのものは一般的だしな。まあ購入したのはドイツやアメリカの特区のナード共ばかりだが。
近々あれを使ってリアルロボット大戦やろうってドイツのアホゲルが言っている。運が良ければテレビ局にも売れるかもしれん」
アホゲルとは田奈先生の知り合いで、ドイツの特区のお偉いさんらしい。
良く名前が出てくるのだが本名や肩書等は俺も知らない。
「設計図の状態で売ったんですか」
「一応パテントも取ってな。特殊な機体なんで結構ふっかけたから、来月あたりにはいい小遣い銭が入ってくるぞ」
「え、もっと儲かるのですか」
キラーン!という感じで詩織ちゃんの目が輝く。
「もっともっとな。まあ薊野には負けるけどな。あれはもう一生ものだ」
きっと例のバネの件だろう。
「売れる商品にするには部品の段階での汎用性と製品の独創性だな、やっぱり。という訳だ。最近ヒットを出していない先輩君」
「まあ地味に稼いでいるからいいですよ」
「この前の草刈り機は実用性は確かなんだがやや凝りすぎだ。もっと白物家電を見習ってシンプルにした方がいいぞ。まあ便利だから結局もう1台生産したんだっけか」
確かにあの草刈り機、不整地走行能力とか色々機能をつけすぎたせいで機構が複雑かつ大型になりすぎた。
だからメインの導入はもっと簡単な機構の別の学生が設計した機械が選ばれた。
俺の設計した奴は機能や安全性を買われて不整地や崖沿い、あと人が良く通る場所等に限定して使用されている。
まあ買い上げプラス1台追加でそこそこ懐は潤ったのだが。
俺は気を取り直して他の展示品を見る。
飛行機械も色々なコンセプトがある。
基本的にはヘリコプターやオートジャイロ等、既存の原理を使った物が多い。
だが時々、例のパワードスーツと同様ぶっ飛んだものもある。
「この椅子も飛ぶ機械ですか」
「それは高空に浮かんで地上の人間を見ながら『見よ、人がアリのようだ。ガハハハ』と笑うのがコンセプトという空飛ぶ椅子だ。その時に掲げるワイングラスもちゃんと置ける。
背中から出ている反転同軸プロペラで浮上して椅子下のダクテッドファンでバランスを取る仕組み。だが、実際バランスを取るのが難しくてな。私も3回落ちた。もう乗る気は無いがコンセプトが馬鹿馬鹿しくて面白いのでつい置いてしまった」
何だか変な趣味の奴だ。
他にも。
「この椅子もさっきの同類ですか」
「これは緊急脱出が出来る椅子で、ボタンを押すと背もたれと座面ごと空中40メートルまで上昇してパラシュートで降りてくる仕組みだ。最大の欠点は空が見える場所で使わないと天井にぶつかってお陀仏になるところだな。まあ空を飛べるということで合格点はつけた」
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