第157話 隣の屋上も趣味的だ

 このマンションの屋上はもう一箇所存在する。

 俺達の部屋の反対側、田奈先生の部屋の屋上だ。


 そこには今までの学生の傑作・駄作・怪作を並べた整備庫があるらしい。

 通称『田奈コレクション』。

 そんな噂がが事実である事を俺は知っている。

 この前泊まった時、窓から見たからだ。


 この話をすると、香緒里ちゃんと詩織ちゃんがのってきた。

 暇だし他に行く場所も無いので、俺は田奈先生に電話する。

 幸い田奈先生は快く見学をOKしてくれた。


 そして20分後、俺達は田奈邸の屋上に来ている。


「これは凄いね。天候シールドかな」

 屋根も壁も無いのに、不思議と屋上には雨粒ひとつ落ちていないし風も吹き込んでこない。


「まあその辺は長年の技だな」

 にやりと笑う田奈先生。

 だが。


「永続魔法、それも水分を99.9パーセント以上含む30グラム以内の物質を弾き飛ばす魔法をかけてありますね。風は一定以上の速さの移動を阻止。今度うちの屋上も真似しようかな」

 付与魔法の使い手である香緒里ちゃんに解析されてしまった。

 しょぼんとする田奈先生。


「でもこの工作機器は凄いですね。魔法仕様の最新型だ」


「ふっふっふっ、何せ開発者は私自身だからな。メーカに頼んで常に最新型をここに置いている」


「つまり課題作成の際に間に合わなければ、ここの機械も使える訳なのです」

 にやりと笑う詩織ちゃん。


「お前達は学生会の工房を使えるだろう。あそこの工作機器も高津や長津田が整備や改良をしているから、機能的にはこの最新型と変わらん筈だぞ」


「ばれていましたか」


「大体はな」

 色々お見通しなようだ。


「あ、私のもあるのですよ」


 詩織ちゃんは並んでいるコレクションの方を見る。

 見ると詩織ちゃん作のSFP-01が置いてある。


「代々の空飛ぶ課題の優秀作はほぼ置いてあるぞ」

 その言葉通り、香緒里ちゃんのスクーターも俺のヘリコプターもある。


「今年の本来の優秀作はどれですか」


「これだな」

 先生は華奢な感じのプロペラがついた超小型飛行機を指す。


「これも魔法仕様だが、最小限の魔力で飛べるように出来ている。少しでも魔法が使える人間なら大体使用可能だな。飛ぶ際は10メートル程度の滑走距離が必要だが着陸はほぼ無滑走で可能。長津田のヘリ程ではないが汎用性を重視した作りだ。部品もごく一般的な魔法部品を使っている」


 俺の審査魔法で確認してみる。

 確かにこれなら俺の魔法力でも充分飛ばせる。

 しかも各部の仕上がりがかなりいい。

 動力伝達部分も最小限でロスが少なく効率的だ。


「かなり設計慣れした作りですね。ここまで簡素かつ無駄の無い構造は見事です」

「これもパテントを取った。魔力が必要だから例のヘリ程ではないが、それでも結構売れ始めている」

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