第12章 ゴールデンウィークは雨模様

第156話 ルイス君の災難

 砂湯は結局あきらめてもらった。

 時折強い風が吹くので、砂風呂を作っても砂が飛んでいってしまう。


 流れる風呂は要望が多くて断れなかった。

 流れている風呂の中を歩くと水圧で適度な運動にもなり美容にもいい。

 そんな根拠の薄い意見に女性陣全員が毒されてしまったためである。


 ジェットバスも若干の出力増強をしておいた。

 これでもう最後だよな、露天風呂の改装。


 既に

  ○ 樽湯(温度調整25度~44度)✕3

  ○ 水風呂(筐体は樽湯と同じ)

  ○ ミストサウナ(詰めれば4人用)

  ○ サウナ(詰めれば4人用)

  ○ 流れて歩けるお風呂(1周12メートル、深さ1.1メートル)

  ○ 寝湯(長さ1.9メートル幅4メートル)

  ○ ジェットバス

  ○ メインの浴槽

  ○ ぬる湯

  ○ 洗い場6人分

と、浴槽の種類はスーパー銭湯以上になっている。


 実際これ以上はスペース的にも増やせない。

 いざという時に空飛ぶシリーズが着陸できる場所も必要だし。


 ゴールデンウィークは天候的には全滅のようだ。

 今日は3日だが天気も予報も雨。

 このまま8日日曜日まで降り続く予定だ。


 やることもないので学生会の新旧役員どもは保養所のようにこのマンションに入り浸っている。

 今はリビングで奈津希先生によるエアロビ教室を実施中。

 軽快な音楽にあわせて俺を除く全員が飛んだり跳ねたり運動中だ。


 幸か不幸かマンションの作りが良すぎて、ここまでしても下の階に影響はない。

 本マンション住民の奈津希さんが言うことだけにそのとおりなのだろう。

 これで苦情でも入っていれば少しは静かに暮らせたかもしれないが。


 リビングで流れていた音楽が終わる。


「はい午前の部はここまで。皆様お疲れ様でした」

 講師の奈津希先生の言葉とともに、人の流れは露天風呂の方へ。

 と思ったらルイス君がこっそり俺の部屋へ入って来た。


「匿ってくれ。この状況で外へ出たくない」

 何せ女子9名だものな。


「でも汗だくじゃないか。諦めれば」

「もう少し誤魔化して内風呂に入る。今は誰か身体を洗っているからまずい」


 外の洗い場は6人しか使えないので、人数が多い時は内風呂の洗い場も使う。

 その内風呂組が露天風呂へ出たら内風呂へ行く気だろう。

 その間裸女が右往左往する時間は俺の部屋にこもって逃げると。


 正しい判断だ。

 でも問題点が無いわけでもない。

 それは。


「ルイス君、このままじゃ風邪を引くぞ。風呂でさっぱり汗を流そうぜ」

 問題点とは過保護な先輩とおせっかいな同級生の存在。

 彼女らの目を逃れきれなかったのがルイス君の敗因だ。


「わかった。自分で脱ぐから。後で合流するから」

 というルイス君は同級生2人と奈津希さんに剥かれつつ露天風呂へ。

 俺はそんな彼をただ無言で見送る。

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