第155話 そっとしておいてくれ、明日につながる今日くらい
色々作ったり資材運んだり露天風呂に入ったりで一週間後。
結局、新一年生3人は学生会に定着してしまった。
ソフィーちゃんはジェニーのサイトを手伝うのが主業務になったようだ。
ルイス君は奈津希さんと武闘派の魔法系研究会へ突入したり、まあ色々やっているらしい。
そして俺の方は……。
「ついに完成しました!SFP-01、フライングフォックス君!完成なのです」
詩織ちゃんの空飛ぶ機械が完成した。
「SFPって、何」
「シオリフライングパワードスーツの1号機なのです!」
2号機以降も作るつもりなのだろうか。
機体は全面魔法動力。
背中と肩前方2箇所のダクテッドファンで自由自在に空を飛び、また2足歩行で歩いて走ってジャンプもする。
両手の先には4本指のマニピュレータが付いており、簡単な動作が可能。
バネ動力によるロケットパンチ機能もついている。
飛んでいった手首はワイヤで自動回収する仕組みだ。
何か色々と、実用というよりアニメや映画な感じの機体だ。
乗り心地は最悪に近いが、アニメのような機動が完全に再現されている。
欠点は魔力を盛大に消費する事で、俺だと3分動作させるのがやっと。
この機体の馬鹿馬鹿しさに思わず感動して、田奈先生に紹介してしまったのが悔やまれる。
この魔法特区という名の孤島で暇をあかせている教授陣という金持ちの一部に、この機体が馬鹿受けしてしまったのだ。
下請け量産は例によって市ケ尾新部長率いる創造製作研究会に投げた。
それでもかなりの金額が詩織ちゃんの懐に入ったらしい。
きっと今年の学園祭、教授会はこの機体でプロレスでもやる事だろう。
2学期からの魔法工学科転入の内諾を田奈主任教授直々に貰ったこともあって、詩織ちゃんはとってもご機嫌だ。
そして俺はそこそこ不幸だ。
その俺の不幸の産物の一部が、マンション屋上に鎮座している。
具体的に言うと、ミストサウナと高温サウナを新設。
ぬる湯を更に広げ、あと樽湯もまた1つ追加。
ちなみに樽湯のいちばん壁際の1つは、既にシャイなルイス君専用となっている。
彼にはこれからも苦労をかける事だろう。
そして更に広げたぬる湯も、ソフィーちゃんがメインの居場所をここに決めてしまったせいで、俺1人の広さは今までと変わらない。
と言うか気まずさは倍になった。
俺とルイス君以外は特に感じていないようだけれども。
「今週末は、晴れたら久しぶりに大物釣りでも行くか」
「いいれすね。久しぶりに新鮮な刺身を食べたいれす」
「はい、はい!私も参加するのです」
週末の予定も決まりつつあるようだ。
それまでに俺のプログラミング課題を上げて。
創造製作研究会へ行って通常の工法で不可能な部分の加工をやって。
GW明けから始まる補正予算への準備をしておく。
授業も何気に難しくなってきているし、予習復習も欠かさずにと。
ああ何か面倒だ。
まあ面倒なのはいつもなのだが。
「修先輩、何暗い顔をしているんですか」
気づくと目の前に俺の不幸の原因がいた。
例によって全裸でだ。
「まだこの露天風呂の改良点は多いですよ。次は流れる風呂の作成です。あとは砂湯とより強力なジェットバスを……」
俺もこの学校に来た当初はこんなに物作りに燃えていたんだろうか。
何か最近燃え尽きた気がする。
「あああ修先輩寝ないで下さい。寝ると死にますよ。死ぬよりはここで一発」
「頼むから目ぐらい瞑らせてくれ。お湯くらいゆったり浸かりたい」
何かもうわからないが、取り敢えず誰か助けて欲しい……
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