第154話 最新型の天敵出現!

「いやあ、まさかトリップ中を皆様に見られるとは思わなかったのです。痛恨の極み!という奴なのですははははは」

 何か話し方もすっかり砕けてしまっている。


「しかしどうやってトリップしていたんだ。パソコンはCAD画面のままだったし」

「脳内再生、動画付きなのです」


 詩織ちゃんはきりっと断言。

 痛い、痛すぎる。


「いやあ、歌はいいですね。リリンの文化の極みですよ」

「そういう方向の歌じゃなかっただろ、見た限りは」


 そういう台詞は鈴懸台先輩のおかげで学習済みだ。

 それにエヴァ系で両手を振り上げて踊るようなノリの歌は多分無い。


「今日はナユタン星人な気分だったのです。ところで今日から当分の間、夕食含めマンション通っていいですか」


「毎日なら食事分位は出せよ」


「それは大丈夫なのです。カフェテリアより美味しいし露天風呂最高!なのです」


 あ、こいつ余分な事言った。


「ロテンブロ、って何ですか」

 ソフィーちゃんに気づかれた。

 でも彼女はそんな単語は知らないらしい。


「ジャパニーズ、オールドスタイル、アウトドアバスですよ。今日だと月も見えて最高だと思うのです」

「面白そう。私もお邪魔でなければ行ってみていいでしょうか」


 あーあ、1人増えてしまった。


「多少増えてもうちは構わないわよ」

 家主の由香里姉もOKを出してしまう。


「ついでだからルイスも一緒に行こうです。皆で親交を深めるですよ」


「僕は今日、着替えもタオルも無いから」

 お、ルイス、君はまともだ。

 と思ったところで。


「タオルや着替え位は修先輩に借りればいいのです。修先輩、いいですよね」


「あ、ああ」

 余分な助け舟を詩織ちゃんが出した。

 ここで駄目と言えないのが俺の弱いところだ。


「そうね。私も今日はお邪魔しようかしら」

「なら人数分少し買い出していこうか」


 風遊美さんも奈津希さんもOKとの事らしい。

 いいのかここの風紀はこれで。

 まあ問題は起こらないのだけれども。


 ◇◇◇


 買い出してプラスしたチキン照り焼きの他。

 冷凍保存していたカンパチや大アジの刺身まで放出。

 そんな歓迎会に近いノリの夕食会の後。

 露天風呂タイムが始まってしまった。


 きゃあきゃあ言って楽しんでいる風のソフィーちゃんと詩織ちゃんをよそに、仏頂面のルイス君が俺の前にいる。


「日本の風呂って他でも混浴が標準なのか」


「そんな事はない」

 俺はそう答えるけれど。


「田舎の方の温泉地にはまだまだあるのですよ。家からほど近い有名な湯の滝のある露天風呂も混浴なのです。混浴は露天風呂の基本なのです」

 余分な答を出す奴がいる。

 ちなみに来たばかりの新人その1だ。


「つまり殆どの場所は混浴では無いという事だ」

 詩織ちゃんの答えにあわせて、俺はそうまとめる。


「理解した」

 ルイス君にもわかってもらえたらしい。

 と、詩織ちゃんがメインの浴槽を出て俺達の前へ。


「大体、男2人で端の方で何なのですか。あんたホモー、って奴ですか」

 詩織ちゃん、変なポーズを全裸で取らないでくれ。

 ルイス君も目のやり場に困っている。

 あと俺の個人的な意見としては、片手を腰につけてもう片手で指差すポーズ。

 もっと胸がないと決まらないと思うぞ。


「あと修先輩、どうせならサウナも作るのですよサウナ。今ストックにある材料で充分作れるのですよ」

 あ、こいつ更に余分な事を。


「え、修、サウナも作れるのか」

 由香里姉の言葉に詩織ちゃんが断言する。


「ミストも乾燥風のも作れる筈なのです。3月末で学校在庫の資材を大量に引き取って在庫にしてあるですから」


 詩織ちゃん、そこまでチェック済かよ。

 これは今まで無かったタイプの俺の天敵だ、きっと……

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