第152話 少し早まったかもしれない
と、俺はある事を思いついた。
こそこそと香緒里ちゃんのところへ行き、ひそひそと相談。
「確かに使いそうですしね。修兄がいいならいいですよ」
と許可をもらう。
ストックヤードから適当な厚さの鋼材の端材を探し、俺のポケット内にあるものと同一の形状に魔法で加工。
再びパソコンの方へ歩いていって今作ったばかりの鍵を詩織ちゃんに渡す。
「この工房の合鍵。とりあえずその機体が完成するまでは自由に使っていい」
「ありがとうなのです!やっほい!やっほい!やっほい……」
お、変な踊りを踊りだしたぞ。
これは喜びの表現なんだろうか。
と、ぱたっと踊りが止まる。
「でも私がここの工作機械を使っていいのですか」
「どうせここを使うのは俺と香緒里ちゃんだけだしな。製作実習の課題は各学年重ならないようになっているし」
「なら期限までに必ずこの子を完成させるのです!」
機械がこの子になっちゃったよ。
「まあ、頑張ってくれ」
そろそろ詩織ちゃんのノリについていけなくなり、俺は香緒里ちゃんの方へ戻る。
◇◇◇
順調にバネ作業をこなして、時計を見ると5時ちょっと過ぎ。
「そろそろ学生会室へ戻るけれど、どうする」
「今いいところなのです。一段落着いたら行くのです」
確かに今離れたら収拾がつかなくなるくらい色んな形のパーツが溢れている。
「あまり無理するなよ」
と声をかけて、俺と香緒里ちゃんは学生会室へ。
戻ってみると、役員と1年生2人の他に由香里姉も来ていた。
「あれ、どうしたんですか」
「現在の学生最強の見本として呼んだんだ」
と奈津希さん。
つまりルイス君の教材という訳か。
ルイス君も奈津希さんも服がいかにも運動しましたよという感じに汚れたり伸びたりしている。
多分模擬戦を何度もやったのだろう。
「詩織ちゃんは」
「作業に夢中になっているんで置いてきた。一応鍵は持たせている」
「1人であの機械類を使っても問題ないですか」
「大丈夫だと思います。既に私より使いこなしている感じです」
「香緒里がそう言うんなら大丈夫だろ」
副会長の承認が下りた。
「何か皆さん、自由ですね」
ソフィーちゃんがそう感想を漏らす。
「まあ仕事が忙しい時以外は単なる仲良し集団だからな。
みんな専門も趣味も違うし、やりたい事があればそっちが優先。まあ一緒に遊びにも行くしお泊まり会なんかもやったりするけれど」
「だから本気で何か専門を追求したいなら、専門の研究会の方がいいかもしれません。同じ目的の人が多数いますから色々な気づきもあると思います」
風遊美さんが言うのは正論だ。
「でも攻撃魔法研究会も見たけれど、薊野先輩や宮崎台先輩程の凄さはなかった」
ルイス君の率直な感想。
「何故か知らないれすが、ここには学校最強の外れ者が集まっているれすから。前の学生会役員もそうれすし、今もそうれす。奈津希さんは攻撃魔法科4年筆頭れすし、風遊美さんも最高レベルの治癒魔法と最強レベルのある魔法を持っているれす。修さんも3年ですけれど物作りの評価は学校トップクラスれすし。香緒里は一番パテントで稼いでいる学生れすし、まあそんな感じれす」
「と、魔法特区最高のPVを誇るポータルサイト運営が言っているけれどな」
奈津希さんがそう言ってジェニーをフォローする。
「でもまあ、それは結果であってここの実績じゃない。ここはあくまで学生会の仕事をする仲良し集団さ。釣りもするし海水浴もするし合宿っぽいこともするけれど」
「という訳で他の研究会や部活も見た上で、色々考えるのがいいと思います」
「まあ来てくれたらうれしいれすけれど」
とジェニーがまとめたところで5時50分。
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