第151話 ロボットはロマン

 今日もガイダンスがあるので1年生の授業は4限まで。

 この前と同じ時間に学生会室の扉がノックされる。

 入ってきたのは2人だ。


「今日はソフィーちゃんは色々回ってからくる予定だそうです」

 現れたのは詩織ちゃんとルイス君。


「今日はどうしますか」


「私は工房へ行きたいです」

 との事なので俺と香緒里ちゃんは詩織ちゃんに付き合って工房へ。

 詩織ちゃんは倉庫へ行くなりストック倉庫の方へ。


「ここにあるストックは、使った後に補充しておけばいいのですか」


「鋼材なんかは年度で補充されるから気にしなくていいよ。機械類は使った分だけ補充するか、使った後にまた戻しておいてくれるかで。あとは台帳を見て判断して」


「了解であります」

 何か凄く嬉しそうに在庫の確認を始める。


「何か本当に工作類が好きそうだな」


「修兄並の工作フェチを久しぶりに見たです」

 香緒里ちゃんのこっそり言った毒舌も全く聞こえていないようだ。


「この辺の工作機械も使っていいですか」


「使っていいけど怪我はするなよ」


「一応ネットで予習済みなので大丈夫であります」


 その手つきから大丈夫だろうと判断。

 俺は香緒里ちゃんのバネ作業の手伝いを始める。

 時々見ている限りでは、何やら順調に作っている様子だ。


 金属板を曲げたり切ったり。

 どうも割と大きいものを作っている感じだ。

 何を作っているのだろう。

 どうしても我慢できなくて。

 バネ作業が一段落したところで詩織ちゃんに聞いてみた。


「これ、何を作っているの」


「例の課題の空飛ぶ機械なのです。どうせ私の場合は正規の課題ではないですから、思い切り趣味に走ったものにしようと思ったのです」


 どれどれとCADの図面を見てみる。


「うわっ、これは凄い」

 空飛ぶ機械としては邪道だが、凄まじく面白い図面が描けている。


「でもこれじゃ重くて飛びにくいだろ。余分な部分が多くて」


「脚部分は自重を支えるからしょうがないのです。でもストックにA7N01があったので大分軽量化できるのです。若干板が薄い分は構造で強度を出すのです」


 まさか番号でアルミ合金の性質が分かる新入生が来ると思わなかった。

 あ、待てよ。


「そうか。VRロボプロは素材指定もあったな」

 そういう妙にリアルさを追求したゲームだった。


「そういう訳です。なので折角ですから今まで作れなかったリアルロボットを作るのです」


「それで空飛ぶパワードスーツという訳か」

 そう、CADに描かれていたのはまさに空飛ぶパワードスーツだった。

 空を飛ぶには不要な腕や脚がある、実用というより趣味的な機体。


「本当はクァドランとかマヤールみたいのを作りたかったのです。でも素材と加工の都合があるのでこの辺で勘弁してやるのです。後で外甲をつければジェットライザーくらいにはなるのです」


「ヴァンガードの方、それともマシンロボ」

「マシンロボの方なのです。操縦方法は違うですが。いや形態的にはウォーカーマシンですかねえ」


「しかしどうやって飛ばすんだ。結構重いだろこれ」

 ジュラルミンとはいえ金属だ。

 操縦席以外に腕や脚など余分な部分がある分かなり重くなる筈。

 重力低減魔法でも使うつもりだろうか。


 でも俺の勘ではそんな事は考えていない気がする。

 意地でも自分の魔法と技術だけで作りそうな感じだ。


「汎用性は無いけれどロマンたっぷりな方法を考慮済みなのです」


「とすれば、出来上がるまで細かい図面を見るのは野暮かな」

 俺はCADから目を離す。


「そうですね。出来上がりを楽しみにして欲しいのです」

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