第150話 天然でもいいから来て欲しい
俺の知らない世界を垣間見た後。
全員風呂から上がってリビングでまったりしている。
「それじゃあ、僕はそろそろ帰るけれど詩織ちゃんはどうする。何なら送っていくけれど」
と奈津希さん。
「大丈夫です。10秒もあれば寮の部屋まで着けるのです」
事も無げに詩織ちゃんは言う。
でも10秒というのは。
「それって瞬間移動?」
詩織ちゃんは首を横に振った。
「瞬間移動出来るほど空間を曲げるのは無理なのです。だから既に曲がっている場所をうまく繋いで最短最速で帰れるルートを作るのです。寮とここの場合、行きは歩いて来たのでルートはわかっているのです。10歩で寮の部屋内に着けるのです」
それって実用的には瞬間移動とほとんど同じではないのだろうか。
「確かに遅くなりましたので失礼です。明日もよろしくお願いするのです」
詩織ちゃんはそう言うと、軽くひざを曲げ次の瞬間姿を消した。
それきり。
痕跡も何もない。
「これって、事実上の瞬間移動ですよね」
「僕もちょっと範囲外だな」
「私もここまでの魔法は見たことが無いわ」
奈津希さんだけでなく由香里姉までそう言う。
「本人は意識していないかもしれないけれど、とんでもないレベルの魔法なのかもしれないな。明日風遊美に聞いてみよう」
そういえば風遊美さんも似たような魔法を使っていたな。
それで奈津希さんがひどい目にあったけれど。
◇◇◇
3限終了後しばらくしての学生会室。
今日も比較的何もなくて暇だ。
「その魔法はかなり特殊ですし危険だと思います」
風遊美さんの意見だ。
「私も見える範囲での空間の歪みを短絡することは出来ますが、それ以上は出来ません。私が前にいたEUの魔法特区にも、知っている限りそこまでの空間操作魔法は無かったと思います」
「やっぱりな」
奈津希さんが頷く。
「うちの両親にも聞いてみたが、そこまでの空間操作魔法は知らない。ただもしそんな魔法使いがいたら、それこそ世界中の諜報機関の取り合いになりかねないという話だった」
「物騒だね」
「ただあの魔法の性質上、捕まえるのは無理だよね」
「案外何度も誘拐されかけているけれど、天然で気づかないだけだったりして」
「シャレにならないれす」
ここにいない詩織ちゃんの話題で話が進む。
「あと、ソフィーちゃんやルイス君は」
「ソフィーはいい子れすよ。真面目だし熱心そうだし」
「そうですね。本当に補助魔法、それも医療系を真面目にやりたいという感じです」
「ルイスは面白いな。僕のような浅く広くじゃなくて風の魔法に極端に特化した魔法使いだ。あれで戦略とか魔力の使い方とかきちんと憶えれば化けるぞ。潜在的には由香里さんと互角レベルの力はあると思う」
「でも叩きのめしたんでしょ、模擬戦で」
「まあな。こういう時は実力差を見せてやったほうが向上心も出ると期待してさ」
「でも3人共今日も来るかしら」
「詩織ちゃんは絶対来そうだな」
そんな事を話しながら彼女達が来るのを待ち受ける。
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