第148話 空間魔法使い天然系
ジェニーが走っていって鍵を開ける。
ドアがすっと開いて。
下手をすれば小学生にも見えるくらい小柄な女の子が入ってきた。
「すみません、急におじゃましてしまったです。」
歩いてくる姿は一見普通に見える。
が、部屋に入った瞬間詩織ちゃんの姿が消えた。
「このエアコン、電源コードがありませんがこれも魔法仕様なのですか」
声が反対側の窓際から聞える。
見ると窓際のエアコンの下、装置を覗き込む詩織ちゃんの姿があった。
「今の移動って魔法れすか」
詩織ちゃんはちょっと考える。
「ひょっとして私また魔法、使ってたですか?」
「ほぼ5メートル、ワープしたわね」
「すみませんです。普通はちゃんと空間に沿って歩くようにしているのですが、気を抜くとつい最短距離を歩いてしまうです」
説明しつつも、詩織ちゃんは相変わらずエアコンを覗き込んだ姿勢のままだ。
「修先輩、このエアコンは暖気と冷気を手動シャッターで調節して吹き出しているという理解でいいですか」
「あってる。その通りだけど」
だけどカバーの上からどうしてわかるのだろう。
機構は全く見えない筈だけど。
「そっか、電気代がかからないから稼働しっぱなしでも問題ないんですね。季節が変わったり寒暖の差が激しいときだけ調節すれば問題ないから手動で充分。確かに合理的です。シンプルな方が効率もいいし故障も少ないです」
1人で納得して頷き、また姿を消す。
「台所の熱器具も全部魔法仕様ですね。手前は魔法を通せば熱が出るタイプで、奥は煮込み等用でしょうか、常時220度でシャッターで出力調整しているんですね」
今度は台所にいきなり現れた。
「で、そろそろ飯にするけれど食べるよな」
突如目の前に出現した詩織ちゃんを全く気にしていない奈津希さんも流石だ。
「ありがとうなのです」
そして満面の笑みでそう答える詩織ちゃんは間違いなく天然だ。
◇◇◇
「やっぱり魔法器具って便利なのです。これが本土に波及すればすごく便利になると思うのです」
「既存産業との兼ね合いもあるからね。持ち出しの際に高い税金がかかるから、結局普及できないでいる訳だ」
「でもあのエアコンなんて便利なのです。うちの実家は北海道ですから、あの暖房側だけでもあればとっても便利なのにって思うのです」
詩織ちゃんは北海道出身なのか。
あ、エアコンと言えば。
「そう言えばエアコンのカバー越しに、どうして構造が分かったの」
「どうも私の魔法のせいらしいのです。いわゆる縦横高さの3次元以外の方向も見えるし使えるという事らしいです。私としては特に意識もしていないのです」
「ひょっとして寮からここへ来る時も、特に意識しないで歩いてたれすか」
「見てたのですか?誰もいないと思ったんで最短ルートを歩いてしまったのです」
成程。
色んな次元からみた最短ルートを歩いた結果、あんな変な状態になった訳だ。
そして本人にそれが特別だという意識はあまりない、と。
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