第147話 詩織ちゃん、強襲
例によって奈津希さんが夕食を作ってくれている。
最近は香緒里ちゃんも少しずつ手伝うようになった。
もちろん奈津希さんの料理は魔法使用で異常に手早いのだけれど、それでも下ごしらえをしたり皿に盛り付けたりを頑張って手伝っている。
そしてジェニーは自室でWebの更新作業。
俺と由香里姉はぼーっとニュース番組を見ている。
するとジェニーが部屋から出てきた。
「夕食1名追加。詩織ちゃんが来たいって言っているれす」
「詩織ちゃんって、今日来た新入生?」
由香里姉が尋ねる。
「そうだけど、何だろう」
「家に魔法を使った家電が色々ある話を聞いて、見てみたいそうれす」
「何だ随分なつかれたな、修」
奈津希さんがからかうように言う。
「いや、あれは本当に魔法的な品物に興味があるだけだと思う。香緒里ちゃんもそう思うだろ」
香緒里ちゃんは頷く。
「案内中にちょっと思考が漏れたので見えたんですけれど、本当に魔法を使った物や機械に興味があるようです。というか、それにしか興味がない位の感じです」
「なら問題ないんじゃない」
由香里姉はそうアバウトに言うが。
「露天風呂とか不味いんじゃないですか」
と俺は一応言っておく。
「特に問題はないと思うれすよ」
とはジェニー。
「私は普通なら不味いかもと思うのです。けれども、詩織ちゃんに限っては問題ないと思います」
香緒里ちゃんは妙なことを言う。
「どういう意味だ」
「多分詩織ちゃんに露天風呂を見せても、その構造だの装置の概要だの作り方だのに興味が集中して、風紀的に問題があるかないかなんて気にしないと思います」
「部屋に入る方法はメールしてある?」
由香里姉が尋ねる。
「大丈夫れす。インタホンで1001を押すように書いておいたれす。ちなみに今寮の部屋を出たところれす」
最後のはジェニーの魔法による感知結果だろう。
そして。
ふとジェニーが訝しげな顔をした。
「変です」
何が変か聞く前に例のジェニーの魔法の感覚。
このマンションと学校が入った見取図に、黄色い光点が表示されている。
「この光点が詩織さんれすけれど」
何を言いたいのかはすぐ俺達にもわかった。
普通なら寮からこのマンションまで道路に添ってゆっくり動いてくる筈の光点が、妙な動きをしている。
ふっと消えたかと思うと近くに現れたり、また同時に複数箇所に現れたかと思うと一気に離れた場所に現れたり。
「これは空間系の魔法ね。きっと本人的には最短距離を歩いているんだと思うわ」
確かに光点は全体としてマンションに近づいてきている。
普通に歩くよりずっと速く。
「もう着くぞ、これ」
奈津希さんの言葉と同時にインターホンのチャイムが鳴る。
「はい、薊野です」
香緒里ちゃんがインターホンを取る。
「すみません、旗台です。つい楽しみで早くついちゃったのです」
「あ、じゃあ鍵開けるね」
「大丈夫です。直接玄関に行くので、玄関の鍵だけ開けてくださいです」
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