第145話 新入生様ご案内(3)
そんな訳で。
俺と香緒里ちゃんは詩織ちゃんを連れて学生会の工房へ。
まず入口直近にある飛行漁船のところで詩織ちゃんの足が止まった。
腰をかがめて奥にある浮上システムを見ている。
「こういう魔法素材はどうやって入手するんですか」
詩織ちゃんが目をキラキラ状態で尋ねた。
「この船の場合は香緒里ちゃんの魔法で作ってもらった。ただ一般的な魔法素材はネットにデータベース化されている。例えば」
俺はパソコン前まで歩いて、魔技大のデータベースを呼び出す。
「大体のものはここで調べられるし注文もできる」
詩織ちゃんはパソコン画面を覗き込む。
「成程、検索も割と親切なのです。でも結構いいお値段がするですね」
「だから、逆に面白い物を開発したら良い収入になる、例えばあのバネの山」
俺は香緒里ちゃんのバネ工場の方を指す。
「このデータベースで注文するとこんなにいい値段」
性能諸元と金額、あと予約状況が表示される。
「うわあ、暴利ですね。でも品切れで予約も先まで埋まっているです」
最初、俺も暴利だと思った。
なので、田奈先生に言われた言葉を返してやる。
「これ位の値段にしないとさ。他の市販素材やモーター類との値段の兼ね合いで駄目なんだと」
「あ、確かにそうなのです。応用範囲を考えたらこの素材で市場が混乱しそうです」
詩織ちゃん、思った以上に飲み込みが早い。
確かに魔法工学科向きかもしれないなと俺は思う。
「何か工作の経験は」
「お金が無いのでVRのロボプロ位なのです」
ロボプロとは互いにロボットを作って対戦させるネットワークゲームだ。
普通のゲームと違うのは、ロボットを作る材料がほぼ市販されているもので構成されていること。
制御もアルデュイーノ等実在するマイコン基板をシミュレートしたものを使い、自分でプログラムを組む必要がある。
つまり実際にロボットを組み立てるのと同等の知識を必要とするゲームだ。
「なら後は実際に素材を加工する訓練をすれば、知識的には充分かな」
「入校した頃の私より上ですね」
香緒里ちゃんも同意する。
「あとはこのパソコン内に今まで俺が作った物が一通り入っている。見てみるか」
俺はCADを呼び出す。
「あ、出来ればジェニーさんの義足の構造を見たいのです。あれだけ自由に動く構造はどうなっているのか知りたいです」
と言うので俺はあの義足のデータを呼び出す。
「このCADの操作方法は分かるか」
「多分。VRロボプロのコンストラクションとほぼ同じなのです」
その言葉を証明するかのように、詩織ちゃんは慣れたマウス操作でスムーズに画面を動かし関節やら疑似筋肉やらの機構を確認する。
「膝関節の構造が凝っていますね。球体関節ではなくジャイロ構造なのですか」
「ベアリング組み合わせたらその方が摩擦低いし。軸の太さと構造で強度はカバーして、動きは例のバネ任せだな」
「確かにここを太くして動きが阻害されても、もともと膝は反対方向には曲がらない。それに単純球体関節と違って力を与えても滑りが出ないです。動力源のバネの固定もし易いです」
理解力があるし指摘が的確だ。
俺の製作意図をあっさりと理解してくれる。
これは確かに工学的センスがあるのだろう。
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