第143話 新入生様ご案内(1)

「ジェニー。いつそういう話があったんだい」

「たった今、メールあったれす」


 ジェニーが防水タブレットを傍らから出す。

 田奈先生対策でカメラがアルミテープで塞いである風呂仕様だ。


 どれどれと皆が寝湯の方へ集まる。

 俺も本当は見たいのだが裸女集合に加わる勇気はない。

 だからぬる湯に浸かったまま声だけ聞くことにする。


「うわこれ何語ですか」

「フランス語れす。ソフィーちゃんはカナダのケベックの人なのれ」


「ソフィーちゃんって知り合い?」

「学生会のHPを作ってすぐメールをくれた人れす。補助魔法科に入ったと聞いているれす」


「3人という事は、他の2人もカナダからの留学生さんですか」

「ソフィーちゃんのペンパルれ、一人は日本人の女の子で一人は英国人の男子れす。それ以上はまだ聞いていないれす」


 詳細は不明という事か。


「男女比も人数もちょうどいいですね」

「でも性格とかはまだ不明です」

「ソフィーちゃんはいい子れすよ。何度もメール交換しましたからある程度はわかるれす」


「何れにせよ、出迎えの準備はしましょうか」

「お茶菓子と学生会の仕事内容のレジュメと、そんなものかな」

「レジュメは私達に説明したものを流用すればいいですね」


 話が自動的に進み始めている。

 内容的にも俺が出る幕はなさそうだ。

 なので久しぶりに一人の湯船を満喫しながらのんびりさせて貰う。


 ◇◇◇


 コーヒーは今セットした落としたてを用意済。

 紅茶は現在蒸らし中であと2分でちょうど。

 パンフレットは学生会関係以外も色々と机上に用意してあるし、奈津希さんお手製クッキーも戸棚で出番を待っている。


 月曜日は1年生は4限まで。

 順当に行ったらまもなく訪問者が来る予定だ。


「接近中れす。あと30秒で来るれす」


 ジェニーの魔法が来訪者を感知。

 そして。

 トン、トン、トン。

 学生会の扉がノックされる。


 香緒里ちゃんが扉を開ける。

「どうぞ」


 ちょっと緊張した感じの3人が入ってくる。

 日本人のかなり小柄な女子、濃い茶髪に丸メガネの男子、男子とほぼ同じ身長だけどいかにも細くて華奢な明るい茶髪ロングの女の子だ。


「まあ、座って下さいれす」

 ジェニーが椅子を引いてどうぞと手招きする。


「コーヒーがいいですか、紅茶がいいですか」

「あ、すみません。コーヒーがいいです」

「僕は紅茶で」

「私もコーヒーです」

 との事なので香緒里ちゃんがお茶を用意。


 なお、学生会幹部は風遊美さんとジェニーがコーヒー派、他の3人が紅茶派だ。

 お茶菓子も出て一通り落ち着いたところで風遊美さんから口を開く。


「どうもはじめまして。会長の鷺沼風遊美です。ジェニーから今日訪問する話は聞いていますけれど、まずは何からお話したらいいでしょうか」


「副会長の宮崎台奈津希だ。まあ、特に細かい事は気にせず、何でも聞いてくれ。例えばこの特区のお勧め場所とか好きな男のタイプとか」


 それに続いて俺達も挨拶する。

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