第141話 小話2終話 悪い正直スマンカッタ
「なるほどな。あの襲撃の時の野次馬が元になっているのか」
ある程度俺は納得したが、謎が残っていないわけではない。
「でも空スパ教やユニコーンの噂は、どう考えても身内でないと出ないだろ」
「ごめんなさいです」
お、香緒里ちゃんが自白した。
「掲示板をみていたら面白そうだったので、ついスパモン教の神像を見たっていうデマを書いてしまったのです」
「僕はそれを読んで、どうせなら僕が信仰する神も足してやれと思って書き込んだ。後悔はしていない」
奈津希さんまで自白した。
「私も書き込みました。夏の夜に出る裸の女性の霊は私の創作です」
風遊美さんも。
「秘密基地説は私よ。あのマイクロバス、ついでだからミサイルとか装備しない」
由香里姉まで。
「つまり俺以外の全員が犯人だった訳ですか」
「修は遊び心が足りないんだよ」
奈津希さんにあっさり斬られた。
でも俺は引き下がらない。
「取り敢えず、書き込んだ責任は取ってもらいましょう」
「責任って、どうするんだい」
奈津希さんが尋ねる。
「それぞれ自分が書き込んだ物を実際に作ってもらいます。材料は工房にありますから。加工は手伝いますからそれぞれ責任をもって作って下さい。つくり終わったら探検部に再度取材してもらって、記事に反省文も一緒に掲載してもらいます」
「ブー!ブー!」
奈津希さんのブーイング。
「黙らっしゃい。どうせ掲示板に書き込んでいる位ですから暇くらいあるでしょう。取り敢えず明日から噂の現物完成まで、露天風呂は使用不可にさせてもらいます」
「監査役、横暴だぞ!」
「不正を発見して正すのが監査役ですから」
実は完成が遅くなって露天風呂が使えない日が続いた方が俺にとってありがたい。
でもそんな事は勿論口にしない。
「武士の情けで、今日いっぱいは露天風呂OKです。0時を過ぎたら湯を抜きます」
俺は皆にそう宣言した。
◇◇◇
正直、やり過ぎたとは思う。
おかげで魔技高専に新たな名所が出来てしまった。
その名は学生会工房。
マイクロバスと船の横には本物そっくりのミサイルキャリアと重機関銃を設置。
作業台の上では服を着た蝋人形が両腕を斬られて失神している。
工房の奥には2メートル大のスパモン神が空中からあたりを睥睨。
運が良ければ見えざるピンクのユニコーンの御姿を感じることが出来るし、更に深夜運が良ければ集団で踊っている裸の小人の霊を見ることもできるだろう。
工作魔法と幻惑魔法と火事場のクソ力とその他によってわずか1日で完成したこれらのギミック。
探検部の記事のおかげもあって宣伝効果は抜群。
春休み中にも関わらず見物客も多い。
ただ工房の中で作業する俺達は、檻の中のパンダ感覚だ。
「修兄、実は反省しているでしょう」
「反省はしている。後悔はしていない」
香緒里ちゃんのバネ作業はマンション代もかかっているのでやめられない。
新学期が始まったら行事続き。
だから今のうちに数をこなしておく必要がある訳だ。
ただ、俺も香緒里ちゃんもジェニーも真面目にお仕事をやっているのだが、見ようと思えばバネを使った儀式に見えなくもない。
ジェニーが聖なるバネを開封して、教祖様こと香緒里ちゃんがバネに魔法を注入して、俺が信徒あてに梱包する。
うん、御札を作っている宗教団体そのものだな。
「まあ学生会に少しでも関心を持ってもらえるようになって良かったじゃないか」
「修、白々しいれす」
ジュニーの糾弾。
わかっている。
今度ばかりは俺も反省しているのだ。
本当に。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます