第125話 皆で試食会(1名除く)

「そうだね、それではこの日のために作った構想ウン年制作1週間の大作をもってくるよ。楽しみに待っててな」

 奈津希さんはにやにやしながら客室へと姿を消す。


「何を用意しているのでしょうかね」


「ろくなものではない可能性が高いと思います」


 月見野先輩と風遊美さんがそんな事を話しているうちに。


「じゃーん!ジャジャジャジャジャジャーン!」

 奈津希さんの声が客室のドアの向こうからした。

 注目しろ!という事だろう。

 そして扉が開き、奈津希さんが登場する。


「えっ!」

 全員が絶句した。


 奈津希さんの服装はほとんど裸に近い。

 申し訳程度のビキニだけををまとっている。

 チョコレート色の。


「今年の新作、水着型チョコレートだ!」


 あまりの馬鹿馬鹿しさに全員が真っ白に燃え尽きる中、つい俺は聞いてしまう。


「それ、本当に全部チョコレートなんですか」

 ちょっと素材強度的に疑問があったのだ。


「よくぞ聞いてくれた修君。本当は全部チョコレートで作る予定だったのだがビキニにするには強度が足りなくてな、だから殆どはチョコレート色の光沢がある人工皮革だ。ただし!」


 そう言って奈津希さんは両手両足を広げたポーズで俺のすぐ前に立つ。


「よく見ろ、胸の2箇所と下の1箇所、艶が微妙に違う場所があるだろう。ここだけはチョコレートだ。常時魔法で冷やしてやらなければ溶けて丸見えになるがな」


 よく見ると乳首の付近と股間の女性器部分の素材感が違う。


「何という物をつくっているんですか!」


 溶かしたチョコを身体にかけるのはアダルトビデオであった気もする。

 でもまさかチョコでビキニを作る馬鹿が身近に実在するとは思わなかった。


「たゆまぬ努力と想像力と魔法によって奇跡のチョコが完成した。チョコ本体はベルギー直輸入で味も確かだぞ。ほれ修、溶ける前に食べてくれ。かじると痛いから優しく舐め取ってくれるとお姉さんは嬉しいぞ。ほれほれ、うりうり」


 右胸の頂点付近を俺の口元へ寄せてくる。

 俺が下がるとその分胸を近づける。

 あ、まずいと思った瞬間。


 不意に奈津希さんが崩れ落ちた。

 その背後には風遊美さん。

 頭を打たないよう奈津希さんの脇に両手を入れて何とか支えている。


「うちの代の馬鹿がお見苦しい事をして申し訳ありません。すぐ片付けますから」

 そのまま風遊美さんはずるずると奈津希さんを引っ張って客間へ。

 今崩れ落ちた衝撃で下のパーツのチョコが割れて一番やばい部分が丸見えになっているのは、取り敢えず見ないふりをしておく。

 チョコに巻き込まないためか毛を剃っているのでよけい丸見えだ。


「何か圧倒されてしまったです」


「いやでも本当にあれを作った技術は凄いと思うよ。布地部分を含め自製だろうし」


「あらゆる方面で優秀なのですが、性格が残念なのです」

 戻ってきた風遊美さんがそう言ってため息をついた。

 いわゆる『才能の無駄遣い』という奴だろうか。

 まだ『病院が来い』とか『病院逃げて』までは行っていないよな。

 今のを動画に撮って投稿すれば行けるかもしれないけれど。


「さて、これだけチョコが集まりましたから、最初のひとくちを修さんに食べて頂いて、あとは皆で味見しませんか。もちろん全部修さんに食べて欲しいという方がいれば別ですけれど」


「私はそれでいいかな、これ全部修に食べさせたらお腹壊しそうだし」

「私もそれでいいです」


 等々、気絶中の1名を除いて月見野先輩の提案に賛成する。

 そうしてチョコレートパーティが始まった。

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