第124話 現物発表会
「じゃあ誰のから開封する」
「では無難に鈴懸台先輩と月見野先輩から頂いたものから」
俺は丁寧にラッピングされた箱を開ける。
出てきたのはスマホ大の長方形で、大きくホワイトチョコで『義理』と書いてある。
「本命チョコの皆様に敬意を表して、だな。それに四角い方が食べやすい」
「私はもう少し普通のデザインにするつもりでしたけれど」
多分飴玉や色チョコでデコレーションしているあたりが月見野先輩の主張で、四角い形と義理の文字が鈴懸台先輩の主張なのだろう。
「次は私の希望れす」
という事なのでジェニーから貰った平たい箱を開ける。
薄い青色のハート型というある意味チョコらしくない色のチョコレート。
「ちょっと色を工夫してみたれす。可愛い色に出来たれす」
確かに色としては可愛いが、青色というのはチョコレートの色というか食べ物の色として適切なのだろうか。
次に俺はちょっと背の高めの箱を取る。
「これは風遊美さんのですよね」
「気に入って頂ければいいのですが」
ちょっと期待しつつ開けると、中は小さな円形の塊だった。
ケーキというにはちょっと違うけど。
「コーヒーチョコマフィンです。チョコ味だけでは飽きるかなと思いまして」
確かに甘いものだけの中では重宝しそうだ。
綺麗に茶色い艶があってチョコチップとナッツがところどころに見えている。
素直に美味しそうだ。
「じゃあ同じ箱つながりで、香緒里ちゃんのを開けるよ」
出てきたのはチョコレートケーキ、じゃない。
分厚いハート型チョコ。厚さ約5センチ。
カラフルチョコで飾り付けをしてあるが基本的にはチョコの塊そのもの。
おいおいこれどうやって食べるんだ。
そう思いつつも取り敢えず表情には出さないようにする。
「一昨年は色々やって失敗した憶えがあるので、今年はシンプルに作ってみました」
ちなみに一昨年のとは涙のように苦いチョコレートケーキだった。
本人は焦げの色とチョコの色の違いに気づいていなかったようだが。
それに比べると今年のはきっとチョコそのものは美味しいから、まあいいか。
「最後は由香里姉のですね」
今年こそシンプルなの、と願いつつ箱を開ける。
巨大なハート型。
サイズA4大。
厚さも1センチ強。
ピンクの無駄にかわいい字体で、『EAT ME!』とでっかく書いてある。
うわーっ、漫画でしか見ないようなベッタベタの本命チョコだこれ。
なんという気恥ずかしい代物だ。
「今年は奈津希がいたからテンパリングも万全だし仕上がりも思い通りよ」
うーんやっぱり薊野姉妹のセンスは今年も変わらないか。
まあ今年は味に問題がない分だけましかもしれない。
「やっぱり奈津希、自分の分は無しで本当にいいんですか。」
奈津希さんの分がやっぱり無い。
風遊美さんが奈津希さんに再度尋ねる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます